歌音の恋心
文字数 2,313文字
その時、歌音は出会った時に一目惚れしてしまった人がいた。その人は、ぶっきらぼうで気が強くて歌音をいつも守ってくれていた三人兄妹で真ん中の男の子であった。
いつの間にか目の前が真っ暗になり、歌音は古びた洋館に一人取り残されていた。ビリビリに裂けたカーテンに粉々に割れた食器などが散乱しており、洋館の天井には大きな穴があいていた。これが、歌音の衰退していた頃の夢世界なのかもしれない……。歌音は、自分が怖くなった。昨日の夢の影響か背中が激しく痛む。
その時、誰かの呼ぶ声が夢の中に響いた。誰の声か分からないが、歌音の愛している人の声だ。そのまま伸ばされた手を取り、歌音の意識は徐々に浮上していった。
しかし、ここまでは覚えている。歌音が圭を庇ったところまでの記憶はある。痛みは、今もあるものの昨日ほどではなかった。
昨夜の寝ているときの痛みは酷くて歌音は何度も目を覚ました。明里にお願いして湿布を貼ってもらった記憶も微かに甦ってくる。
そして、今もその夢の断片を見たことになる。苦しい……。