作戦二日目③
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合奏が始まる頃には、木管セクションメンバーから死相が出ているのが分かった。昼食の時間を短くしたのにも関わらず、「マナティー・リリック序曲」のオープニングの連符の掛け合いが完成しなかったみたいだ。
今から、録音をする前準備をするところだ。「三日月の舞」「はとポッポの世界旅行」「森のスケッチ」を収録した音源を今日中に病院に届ける。これが、本日の歌音と圭のミッションなのである。
まだまだ一日は長い。油断は禁物だ。油断しているととんでもない事にまきこまれるのは分かりきっているのだから……。
全員が音の調節が終わったところで、悠がクラリネットを吹くのをやめ、歌音とアイコンタクトをとってきた。
歌音は、大きく息を吐いた。
曲は、再び最初のようなファンファーレと木管パートの連符の掛け合いに戻る。最後のファンファーレは、弾けるようにしていい終わり方をしたのであった。
これも朗報だが、医師である白川奈緒の情報だが、とある患者は愛する人のキスで目覚めたと言うらしい。これも試してみる価値はあるだろうが、聡太が好きな女子なんて聞いたこともないし、見たこともない。確証があるのは、パートナーである南 詩織ぐらいで後のことは何も知らない。
果たしてこれだけの情報で聡太を目覚めされることは出来るのであろうか?
全ての事を知っているのは、神のみであり、歌音たちは何も知らない。