加速を始めるストーリー
文字数 2,306文字
予言書に従うなんていつの時代の話なんだよ、と歌音は思ってしまう。それでも、悠の心には余裕など一欠片も見ることは出来なかった。やっぱりそうだ……世界は、崩壊への道筋を歩み続けているのだと……。
翌日、歌音は再び聡太の練習風景を見に行くことにした。
今日も、南 詩織と一緒にチューバを奏でていた。
「マナティー・リリック序曲」のチューバのメロディーが聞こえてくる。曲は、ほぼ完成に近づいているのは分かる。しかし、何かが足りない。歌音は、何が足りないのかチューバのレッスン室の扉にもたれかかったその時だった。
いきなり扉が開き、歌音はバランスをとることが出来ず、そのまま後ろに転けたのであった。
その後、詩織と聡太の二人に捕まった歌音は、散々練習に付き合ったのであった。
やはり、聡太は何かを隠している。心が叫びたがっているのが分かる。本当の心や思いを隠している可能性がある。
歌音は、しばらく聡太の様子を見ることにしたのであった。
フルートが連符でずれ、クラリネットがバラバラのチャーハンのような演奏になってしまう。トランペットの高音が音を外し、まるで曲の中で修羅場が発生しているかのようだ。修羅場は、「ウエストサイドストーリー」の中だけにしてほしい。
歌音は、呆れ返って指揮を止めた。これ以上は、曲にならない。
音楽は、努力する人と才能がある人が生き残れる世界なのだから……。
このクラスには、そういう人が集められているはずなのだが……何故、うまくいかないんだろうか……。
そんな歌音に一成が声をかけた。
どうして最近は、こんなにも勝ち負けに拘っているのか歌音には分からなかったのだ。
音楽の世界は、あのボードゲームで有名なダンゲロスSSと同じ世界なのだから……。
曲中で相手の学校を蹴落としあう……そんな感じは……。
こんなにも嬉しかったことは、ここに来てからはあまりなかった。毎日、戦いに明け暮れて、気がついたら私を認めてくれる友達も増えてきていた。しかし、それも普通の行動ではなかった。普通じゃない事をして、その友達の命を救って……。ほとんどの事件には、白川 秀が関わっていたのは確かだ。
このミッションの事は、追々起きていく事なので今は説明しないでおこう。