10月定例コンサート②
文字数 2,241文字
これは拒絶するだけ無駄であるが、歌音はその事に気がついていない。今は、誰の質問にも答える気がない。
それでも、明里と結愛の興味に惹かれたのか里紗と渚も食いついてきたのだ。もう逃げ場は無さそうだ。
歌音は慌てるふためく。この事を知られたら一成の人生が危うい。まだ、何もしたことないが……。一成のロリコンが災いすると……嫌な予感しかしない。里紗に知られたとなるとすぐに昴にバレてしまう。これも時間の問題だ。
歌音は、
これだけ里紗と話していても、里紗の心は完全に閉ざされている。巨大なクモの巣に引っ掛かった可憐な蝶が身動きもせずに、されるがままの状態になっている。まさにそんな状態の里紗をどのようにして救い出すのかは、後日分かることである。
ここにいるのが辛いと思い、広瀬川沿いにやって来たのだ。ここなら誰も来ない、と思っていた歌音であったが、現実は甘くなかった。
その音の主は、若い女性に囲まれていた。「風の通り道」を奏でている人物は、歌音がよく知っているあの人物であった。
すぐに歌音の声に反応した圭は、驚いたような表情をして固まっている。そして、このギャラリーの山をどうするべきか頭を悩ませるのであった。