一生来なくて良いのに……①
文字数 2,094文字
あの日から……昨年の関西吹奏楽コンクールの日から私の時間は、ずっと動かない。多分、一生動かない。心な深い傷を受けるぐらいなら……
遂にアンサンブルコンテスト宮城県大会を迎えてしまった。
「もう嫌……逃げ出したい」、って言いたかった。でも、私にはそんな勇気なんてない。高山 里紗と南方 葵は、同一人物だけど性格は全く異なる。
高山 里紗と南方 葵は、一生同一人物にはなれない。なってはいけない。
これは、悠くんのおかげ。ソロを吹いた私には何の恩恵もない。
次に来るのは、仙台市高等学校合同演奏会。竹下高等学校や全国に毎年駒を進めている聖セリーヌ学園高等学校。私の出る幕なんてない。悠くんが何とかしてくれる。
でも、もしもの話……悠くんがいなかったら、私たちはどうなるんだろうか?
明日を本番に迎えた仙台市高等学校合同演奏会。
最近は、パート練習に参加するようにはなったけど前までは、本番が近くならないとパート練習には参加していなかった。
でも、この学校に来てから私の何かが変わろうとしていた。私に足りない何かが分かりそうな……そんな気が……。
それなら願う。本番なんて……一生来なければ良いのに、と。明日なんて来なくても良いのに……。