現代のナイチンゲール降臨
文字数 1,407文字
今日は、左手で指揮棒を持とう。右腕に負担をかけたくない。
今日は、圭くんと学校へ行くことになっている。待たせるわけにもいかない。歌音は、鞄にスコアと指揮棒を入れると、急いで部屋の鍵をかけ、寮の外に出た。
四人は、早足で急いで学校に向かった。
やっぱり傷口が疼いて痛い。
指揮振れるかな?
いざってときは、私の屍を越えていけ、と歌音は、そんな感じで指揮棒を振り落とした。
クラリネット・フルートのメロディーが、始まる。甘くて慈愛を感じる音色。イメージは、やはりナイチンゲールだろう。
躍り疲れた踊り子は、ナイチンゲールのように慈愛に充ち溢れた看護師に変化した。
トランペットのメロディーラインが終わり、再び、クラリネット・フルートのメロディーが始まる。明るく未来を見据えた音。それが鳴り響いている。一人のクラリネットが引っ張ってくれている。
最後は、チャイムの音から中低音パートのメロディーに変わり、トランペットは少しだけ休符。クラリネット・フルートのキラキラ輝く音色には、一人の音を除いて感情がない。
最後のフレーズ……腕が痛くて上がらない。歌音は、指揮棒を取り落としてしまった。
最後の八小節なのに……。
一応、全員の名前を教えてもらい、クラスのチャットを教えてもらった。
この後、学園の泉に住むセイレーンの噂がある、とチャットに投稿されていた。多分、デマだと歌音は思った。
しかし、これは現実になるのであった。