手紙
文字数 1,484文字
季節は進み、秋本番。
制服も夏服から冬服になって、半月経っていた。
明里と歌音は、一緒に寮を出て通学していた。その時、同じクラスの國山聡太の姿を見つけたのであった。
聡太は下を向き、何かを見ていた。
歌音は声をかけないようにしようとした。何故なら、神妙な表情をしているからだ。そこは、空気を読んだ方が良い、と思い通り過ぎようとしたが、明里は空気を読まずに聡太に話しかけたのだ。
ホームシック……家族と離れている時間が長いとなってしまうもの……。
そんな聡太も家族からの手紙で急に家族に会いたくなってしまったのである。歌音も家族に会いたくなる時もあるが、家族に近い一成が教師をしているだけあって、ホームシックになることは無かったが、他のクラスメイトはどうなんだろうか。
明里もどう思っているのだろうか……。
歌音は、聡太に尋ねた。
いきなり明里に抱きつかれた歌音は、明里に対してギブアップを宣言する。何故なら、思いっきり抱きつかれたから身体がすごく軋んだからだ。このままだと、骨を折られそうだったからだ。
何とかして明里を引きはがした歌音は、聡太に見られていることに気がつき、再び聡太と向き合う。
今回、十月末に特別講演があるだろう。その時に、俺の家族を招待したい。だから、その時にチューバが目立つ曲をしたい。だが、それだといけない……。みんなが目立てる曲をやりたい。何かないか?
チューバのソロがある……!! 俺もこの曲やりたい!! 「はとポッポの世界旅行」みんなが知っているあの曲と同じだ。これならお客様や俺の家族の気をひけるかもしれない!! 今回は、俺も協力するから今回の後援会、成功させてくれ!!
この時、歌音たちは知らない。
また、脅威となるあの人が立ちはだかるなんてこの時誰も知らないことなのであった。
時は進む。しかし、この時の悪戯は誰にも止められない。このまま、世界は滅びの道を歩み続けるだけなのであった。
音楽さえ信じていればいい、と言う人間もいれば、戦争で世界を滅茶苦茶にしてしまえばいいという人間もいる。歌音たちの吹奏楽団は、どちらでもなくその戦乱の世を戦い続ける、という選択肢をとっているのだ。
そのことだけは、忘れないでほしい。