『ラ・カンパネラ』にのせて
文字数 2,074文字
歌音の持つ音楽性は、ここでも生かされていた。かなり焦りの見られる演奏だが、一つ一つの音が正確に奏でられる。フランツ・リストの曲で一二を争う難しさを誇るとされるこの曲にのせて悠と昴は、四分三〇秒でこの戦いを終わらせる事が出来るのか……。
その時だった。いっそう黒い靄を出し、自分達の身長を遥かに超える大きさの不協和音が現れた。
悠が再び不協和音に向かって氷の弾を撃ち込んだ。今度は成功し、不協和音が氷付けになる。
さぁ、仕上げだ。
ちょうど『ラ・カンパネラ』の演奏が終わったのと同時であったのが奇跡だ。
苦しそうにしている悠は、歌音と昴を不安にさせまいと笑顔を振る舞う。