束の間の休息①
文字数 2,348文字
これが高校生の吹奏楽の次元なのか。
私は、数十分前まで竹下高等学校吹奏楽部の演奏を聴いていた。私のこの先のライバルになる相川 奏斗くんの指揮者としてのスキルは尋常ではないぐらい常識からかけ離れたものだった。
最初に奏でられた楽曲は、相川 奏斗くんが作曲したオリジナル楽曲で未発表のもの。恐ろしかった。私には出来ない事を、意図も簡単にやり遂げてしまう……。私には無理だ。作曲スキルなんて持ち合わせていないし、お兄ちゃんの力を借りても勝てる気がしない。
そう考えながら食べる夕食の唐揚げ弁当は、脂っこさと味気無さを感じた。同じチームの女の子と食べる夕食だが、会話もなければ、表情もかたい。完全に私たちは、負け戦を強いられている。
私は、セリアさんに連れられ、女子控え室を出た。
暗闇に包まれているから何か仕掛けられている、と私は思い込み、身構える。
それら全ての点と点が繋がり始める。
高山 理世贔屓、それは私の心に燻り、新たな闇を生み出していく。連盟側への不信感や思惑感は、この日から雪のように少しずつ心に積もり始めた。