航海士の嘆き
文字数 1,769文字
師匠は、……とても美しく……そして優しかった……。
結婚した、と聞いたのは、……一年前……。
突然だった……。夕陽は、……言葉を失う……。更には、……耳を疑う……。
美羽は、ピンクの紫陽花が……似合う……。夕陽には、勿忘草が似合う……。だから、……俺の事……忘れないで……、と夕陽は……思う。きっちりここに……存在している……事……。
夕陽の心が……ここにない……そんな状態……。頭と心の中には、……結婚してしまった……師匠の笑顔が浮かび上がってくる……。
その笑顔は……、……誰に浮かべてるの?
夕陽なのか……? 夕陽じゃない誰か……?
夕陽は、……一人でこの世界に……閉じ込められた……かのようだ……。
しかし、……この思いは……届かない……。決して、……この思いは……そのうち忘れ去られて……おしまいなのだから……。
夕陽の思い……。どうしたいのかを……。こんな……口下手な夕陽を……友達だと言ってくれる……美羽なら……喋っても……良いのかもしれない……。
しばらくすると、メールが届き、来週の日曜日にレッスンをしましょう、ときた。
夕陽は……、このメールにドキッと、した……。
この後も……ドキドキがおさまらない……。これが、俗に言う恋、だということに……夕陽は……気づかないでいた……のだった。