24-2.リベンジ

文字数 987文字

「生徒会長すごい」
 小暮綾香と並んで競技を見ていた須藤恵が目を丸くする。
 どういうコントロールでか一ノ瀬誠は縦横無尽に動く的を外さない。

「器用だねー」
 半ば呆れて船岡和美がこぼす。
 結局玉入れは白組の圧勝だった。

『続いての種目は「わたしキレイ?」バトン代わりの一年生男子に女子が衣装を着せて廻りながらゴールを目指します。どうか可愛くコーディネートしてあげてください!』

 一年生男子と限定されたはずがなぜかその中に二年で生徒会長副会長の本多崇がまじっていて、応援席から異様な歓声を浴びていた。
「不憫な」
 綾小路が心の底から憐みのつぶやきを落とす。

『午前の部最後の種目は女子限定、バーゲンセール! 男子生徒はあたたかく見守ってあげてください』

 ぎゃあぎゃあと激しく竹の棒を奪い合う女性陣の姿には言葉もなくなる。

「あー、おもしろかった」
 汗ばんだ顔をパタパタ仰ぎながら須藤恵は笑った。
「ねえ、綾香ちゃん」
「テンション上がっちゃうんだよね、あれ」
 少し恥ずかしそうに綾香も同意する。
 昼食を広げながら森村拓己は苦笑した。

 正人はといえば無言で弁当を食べた後、ひとりで立ち上がった。
「先に行ってる」
「うん」
 見送る綾香は寂しそうだ。
「しょうがないよ」
「午後は出番多いから、緊張してるんだよ」
「うん、そうだね」




 上半身をストレッチしながらぶらぶらしている正人に安西から声がかかった。
「池崎、午後は頼むよ」
「はい」
「君にとってはリベンジだ。まずは合戦で勝利して総合優勝に王手をかけよう」
「はい!」

 同じ頃、やはり準備体操している中川美登利に尾上貞敏が声をかけた。
「中川。午後は陸上競技が集中するからな。なんとしてもここで点を稼いでおかねば」
「わかってるよ。必ず安西の首を獲る」

『午後の競技を開始します。まず始めは部活対抗仮装リレー。既にトラック内では様々な衣装の選手たちが楽しませてくれています。各部バトンにも趣向をこらしていますね。あ、園芸部は鉢植えのポピーです。なんとも可愛らしいです』

 会場が盛り上がっている中、次の競技に参加する選手たちがグラウンド両端の入場門前にそれぞれ集まり作戦会議を始めていた。

 まずは紅組サイド、安西は余裕綽々で言い放った。
「作戦なんてないよ! 機動力ではこっちが勝るんだ、とにかく攻めるのみ。片端から雑魚を討ち取って敵大将に迫る! これでボクらの勝ちだ」
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登場人物紹介

・池崎正人


新入生。持ち前の行動力と運動能力で活躍するようになる。負けず嫌いで男らしい性格だが察しが悪い。

・中川美登利


中央委員会委員長。容姿の良さと性格の特異さで彼女を慕う者は多いが恐れる者も多い。

・一ノ瀬誠


生徒会長。美登利の幼馴染。彼女に動かされているようでいて、実はいちばん恐れられている。

・綾小路高次


風紀委員長。堅物で融通が利かないが、意外な一面を持っていたりもする?

・坂野今日子


中央委員会書記。価値観のすべてを美登利を基準に置き絶対的に従っている。

・船岡和美


中央委員会兼放送部員。軽快なトークが得意。

・澤村祐也


文化部長。ピアノの達人。彼も幼い頃から美登利に心酔している。

・安西史弘


体育部長。際立った運動能力の持ち主で「万能の人」とあだ名される。性格は奇々怪々。

・森村拓己


正人の同級生で同じく寮生。美登利の信奉者。計算力が高く何事もそつなくこなす。

・片瀬修一


正人の同級生。総合的に能力が高く次期中央委員長と目される。マイペースで一見感情が鈍いようにも見えるが。

・小暮綾香


正人の同級生で調理部員。学年一の美少女。

・須藤恵


綾香の親友。大人し気な様子だが計算力が高く、けっこうちゃっかりしている。

・宮前仁


美登利と誠の幼馴染。市内の不良グループをまとめる櫻花連合の総長になるため北部高校に入学した経緯を持つ。

・錦小路紗綾


綾小路の婚約者。京都に住んでいる。

・志岐琢磨


喫茶ロータスのマスター。元櫻花連合総長。美登利たちの後ろ盾のような存在。

・中川巽


美登利の兄。初代生徒会長。「神童」「天才」と称されるものの、人間的に欠けている部分が多い。それゆえに妹との関係を拗らせてしまう。

・榊亜紀子


美大生。芸術に精魂を傾ける奇抜な性格の持ち主。

・村上達彦


巽の同級生。生い立ちと持って生まれた優秀さのせいで彼もまた拗らせている。中川兄妹に出会って一層歪んでしまう。

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