14-2.「ビョーキっすね」
文字数 877文字
なんだかよくわからない嘆息をして宮前は片瀬に質問する。
「さっきのあの子らもさ、まあ、イケてる方なんだろ?」
「まあ、普通にかわいいですかね。小暮なんか学年一って言われてます」
「マジか。そこまでか。でもオレには全然なのよ」
ぐしゃぐしゃとゴミを丸めて宮前は男らしい顔をしかめた。
「中川のあの顔子どもの頃から見てんだぜ。たいていの女はへのへのもへじよ」
(すげえヒドイこと言ってる)
「顔じゃなくて性格をみましょうよ」
「その性格ってのがまたさ。あのハチャメチャさに慣れちまってるから、普通じゃもの足りんのよ、オレ」
「ビョーキっすね」
「そう思う」
なるほど、中川美登利に長く関わるとこうなるということか。気持ちの所在は別にしても。
片瀬は興味深く思考をめぐらす。選挙戦のあの荒んだ日々。
「選挙、荒れたんだってな」
宮前がぽつりと訊いてくる。
「そうっすね」
あの期間もずっと片瀬は美登利の後に付き従っていた。だから片瀬は全部を知っている。中央委員長の手口のすべてを。
「あんなに卑怯に残酷になる必要があったのかなって思います」
正直に、片瀬は思ったことを話す。
宮前はふっと笑って彼らしくもなく瞳を伏せた。
「今にわかるさ、あいつらがやろうとしてることがさ」
「……」
「いや。そのときが来たって、わかる奴なんかいないかもしれない。でもそうだな、おまえみたいな奴なら気がつくかもな」
「褒められてんですかね?」
「褒めてる、褒めてる。そういや中川がおまえのこと言ってたわ。冷静で頭が良くて観察力があるってな」
冬休みに入る前に片瀬自身も美登利に言われていた。
「どうしていつもあなたについてきてもらってるか、わかるよね」
無言で片瀬は頷いた。
「拓己くんは頭もいいし計算もできる。でもまわりばかり見て思い切りに欠けるところがある。池崎くんは行動力も瞬発力も抜群だけど状況を見る目がまったくない。あなたがいちばんバランスがいい」
淡々と言って美登利は笑った。
「同じようにやれだなんて言わないよ。あなたはあなたのやり方を見つけてほしい。あと一年の間に」