26-4.不安
文字数 961文字
だが文化祭前日、敢え無く向陽がやられた。
「小人数だけあって、奴ら逃げるのがうまい」
そしてあろうことか文化祭当日にも連中はやって来た。向陽高校にしてみたら泣きっ面に蜂だ。
「ふざけやがって!」
これにはさすがに宮前が激怒した。これでは櫻花の面子丸つぶれだ。
次に狙われるのはおそらく江南高校。
ここで江南の官房長篠田幸隆がようやく重い腰を上げた。
「あまり櫻花連合と馴れ合うのもどうかと思っていたが、仕方ない」
櫻花メンバーと江南の手練れ、青陵からの応援部隊とで江南高校のまわりはがっちり固められた。
向陽の経験から言って、文化祭当日に来るとは限らない。そして捕まえない限り何度だって来るかも知れないのだ。
そして今日、文化祭前の江南にセレクトが現れた。
こうなると青陵にだっていつやって来るかわからない。
大通りに面した江南高校と違って青陵は住宅地に三方を囲まれているから、オートバイの集団などが路地を入ってきたらすぐにそれとわかる。
そうしたことが起こった場合、周辺の住人に迷惑をかけてしまうことにはなるが。
「背に腹は変えられないか」
つぶやいて立ち上がった美登利は、池崎正人の方を見下ろしていた。
休日の早朝に呼び出された池崎正人は河原の東屋に向かった。
三大巨頭と安西史弘が正人を待っていた。
「三年だけでなんとかしたかったけど、そうも言ってられなくなった。池崎くんにも手伝ってほしいんだ」
江南高校に向かいながら正人は美登利に説明を聞いた。
「それで今日は文化祭当日の江南を皆で見張ろうってわけ。それでなんとか奴らを捕まえたい」
「ボクが追いかけたけど今一歩だったからね」
ひょいと安西が肩を上げる。
やっぱりろくでもないことになっていた。もっと早く自分を頼ってくれても良かったのに。
正人は驕ったことを考えかけて、いけないと自分を叱咤する。
江南に到着すると篠田幸隆が挨拶に来た。
櫻花メンバーを率いた宮前にも会った。正人が初めて見る真面目な表情をしている。
表情と言えば、中川美登利はずっと固い表情を崩さない。大丈夫なのかと正人は不安になる。
――たぶん私は、また同じことをするだろうから。そういうときには、あなたが私を止めて。