習合 節一
文字数 962文字
その四、
「名推理でしたな」悪所から離れて行く。世道が言った。「む」「裏で手を引いているのが、秦氏であったという下り」「新京造営以来、連中の身の入れようはあきらかじゃ。こたび、おのれの氏神を祀るにあたって、しゃにむに運動し、経費を請け負うのは見えておった。徐福の顔立ち、工夫商人その他、建立にたずさわっている面々の造作、その共通点に気づいてからは、一気呵成じゃ。氏族ぐるみ、しかも、経済も技術も全般に。秦氏なら、自ら請け負う」
秦氏。
大陸からやって来た、
異風は、もう、なくなりつつある。
(連中のきらめきも、これより成熟する国風のなかに息づくこととなろう)祭祀の家藤原に属するものとしては、国風に軸足を置く以外の選択肢はない。それでも、綾織りのように、あでやかで、異彩を匂わせる
むしろ、そういう変化が、全体を活かすこととなろう。
(消え去っていくのだ)徐福の声がよみがえる。(ほうよな)
融けて、うすれる。
お
背後から、霊感に響くものがあり、振り返った。そこには、月をも脅かす、兵主、蚩尤の大身がある。静物と化していて、尊像であり、それでいて、生きて、息づく。
(
おのれの内側で宿った
さみしい
。この気持ちに、理屈はない。
兵主が、まさか、泣くはずもない。だから、
たたずむ。
(あはれ)
依然、うずき、どうかすると骨の根を揺さぶるふるえを、歯噛みして、押し殺した。
「与力せねばなりますまい」世道が言う。彼も、蚩尤を見ている。「天意すでに定まった以上、われらは従うのみ」「うむ」たもとで、目許をぬぐう。
(盛事じゃ)
「たけなわを飾らん」
よそおうのみだとしても。