まつろわぬ民 節六拾

文字数 379文字

  かがみよ かがみ かがみさん
 ――まったく、鏡が、「世界で一番」の美を見定められるのも、当然のことだ。
 鏡の内に、世界あり。
 だから、鏡はいつでも、世界で一番のもの(トップ・オブ・ザ・ワールド)を心得ている……
 この奇跡――
 思うに、鏡が、たとえば澄んだ水面のように、鏡同様の働きを示すシチュエーションでは、だめなのだ。
 鏡の呪力は発揮されない。
 鏡が、金属に鍍金し、磨き上げた人工物(アーティファクト)だからこそ……

である水面から切り離された、人間が独自に作り出した鏡面だからこそ……
 そこには、万物を写し取り、世界を捕らえる呪術が成立する――
 限定的で、一時的なものなれど、それはまぎれもない、世界創造(クリエーション)だ。
 逆に言えば、それを人の手で成し遂げた偉業こそが、異形たるがゆえに――呪術(コンジャー)となる……
 技術が
 呪術に。
 

――

 偉業(ひとのわざ)は。
 技術(ひとのわざ)が。
 技術(ひとのわざ)ゆえに。

 技術(ひとのわざ)の、その喜びよ……
 
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