ひょうすべの誓い 節廿二

文字数 470文字

 こんなことは、諸状況から見れば、自明のことだ。ほかの記録では、この時点で官兵衛が「天佑にございます、天下様におなり遊ばされまし」と天下の簒奪を吹き込んだとされている。ずいぶん、官兵衛を悪者にえがいたものだが、おそらく、本当に、この間、なすすべもなく、秀吉は、とりみだしていたのだろう。
 おのれの依る天下様がお亡くなりあそばされた――秦の人間にとって、おのれの(いただ)く天がくずれたようなものだ。
 嬰児のように泣くしかない――
 ある意味「よそもの」である官兵衛には、秀吉ほどの器量人のこの狂態は、理解できるものではない。状況はととのいすぎるほどととのっている――やることはひとつではないか……
 このもどかしさ、そして、秀吉を正気にもどすための気付け薬として、あるいは、本当に、「天下様」を吹き込んだのかもしれない――時間との勝負なのだ。太閤記によれば、毛利方に変を報せに走った光秀の密使をとらえることで、秀吉軍は異変をしったのだという……同じような密使がほかにいないとは言えず、織田家の急変をしれば、毛利勢は動揺する秀吉軍に襲いかかるであろう――
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