まつろわぬ民 節百五

文字数 663文字

 千晴(秦氏系)の秀郷流を追えば、その巨魁は奥州藤原氏であり、蒲生氏はよく知られているとおり近江の名族、内藤氏は甲斐・丹波・長門・三河だ。
 ……むしろ、関東だけは触れぬよう、避けているふしがある。波多野氏(相模)という例外はいるものの、関東平野の覇者は、源氏なのだ。
 
 ここから読み取れるのは、秦氏と、千常系、源氏との暗闘だ。
 
 どうも、日没する処、文明圏からはずれた東国(あづま)へ向かい、そこであらたな旭日(アップライズ)を迎えようとしていた秦氏も、ただ、雌伏するだけではいられなかったらしい。
 
 東国の王になるべく、源氏が立ちふさがる。
 安和(あんな)の変……
 
 おそらく、その因果は、平将門の乱からはじまっていたのであろう――むしろ、清和源氏を祖とするこの源氏のうごきは、異邦人を嫌いこの国の列強からのぞこうとする抗体反応のようにも思える……
 同じ秀郷流の、千常(源氏)と千晴(秦氏)に端を発する争闘は、この稿では触れまい……平安中期から末期にかけての政治劇と冷戦は、壮大に過ぎる。
 ただ、水面下で源氏とのはげしいたたかいをくりひろげていた秦氏も、平安末期には、波多野氏を基軸に急旋回する。
 波多野氏が頼朝の父義朝の妻を、さらに、後に波多野義常が頼朝にそむいたものの、最終的にはその側室を出している。これだけなら、波多野氏単独の遊泳術とみれなくもないが、同時期、あの有名な、
 
 源義経を

が保護する、
 
 という事件が起きている。なにか、ところどころではそむきつつも、大局的には秦氏全体が、源氏側に接近するムーブメントがおこっていたように思える……
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