まつろわぬ民 節六拾七

文字数 409文字


 女神は、渡らせ給うた――分祀、とか、分魂(わけみたま)、という考え方がある。神は神明――まさに、灯明のごとく、他に分けて、広げることができる……罔象女神(みずはのめのかみ)は、秦氏の神鏡へ。
 蚩尤の下知のもと、罔象(もうりょう)が渦巻き、
 黄帝(みかど)と決戦している――
 そういうご神体にやどったのだ。
 二律背反――矛盾の定め。
 譲らぬ矛と盾が同時に成立するためには、向き合いつづけなくてはならない――雌雄を決するがごとく命がけで……決して、優劣には言及せず……
 永遠に決着のつかないまま、矛盾は、予定調和になる――
 
 調和(コンコルディア)
 
(ふ)徐福が瞑目する――もって瞑すべし……その瞼裏(けんり)には、あの刹那の幻視に、あらたかに輝いた、日がある。
 本邦の日だ――
 (畢竟(ひっきょう)、これか)今や澄明になった小泉川を見つめる――
  弓はりの月に(はづ)れて見し君のやさしかりしはいつか忘れん
 
 惚れたがまけだ――あの日のもとで、あの日の(もと)につとめた日々が、もう、分かちがたく、秦氏自身になっている……
 
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