まつろわぬ民 節七拾三

文字数 472文字

 「あれは――あやつは、わしら

だ。――それを、呑まねばならぬ」
 かつてあったままでは通じない――だからといって、かつてありし遺風を捨てるなぞあり得ない――
 ならば、その遺風のみを……
 異風さえ見分けのつかなくなった、国風にまぎれるかすかな異彩として……
 影のようにあえかに――響きのように揺らぎながら……
 それでも、たしかにそこにある、わけのわからない――説明のできないなにかとして……
 その

のみは、継いでいく……
 
 技の民であり――武の民であり……
 
 究極的に、朝に屈さぬ、野の勢力家として……
 
 邦人とは別個の、

として……
 
 「そうなれば、いっそ、あのむくつけき妖魔を上塗りするために、周到に習合を重ねていく――」
 
 あるいは、稲荷(いなり)として……
 あるいは、加賀国の白山信仰として……
 あるいは、夜間の河上交通に由来する妙見(みょうけん)信仰として……
 あるいは、秦河勝(はたのかわかつ)が招来した庚申(こうしん)信仰として……
 
 あらゆる局面に、秦氏は浸透していく――
 
 古くから、中央と豪族に献じてきたその富力を傾けて……彼らは、ありとあらゆる一面(アスペクト)に浸潤していく……
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