習合 節廿六

文字数 242文字

 
 (ゆ、ゆかぬ)世道は、呪詛に降伏(ごうぷく)された苦しみの中、おなじ苦痛から逃れんとする、上長を見る。もはや、大水に等しくなりつつある川辺へ突進し、それのみならず、(あ、ああ)
 ぶづ、と、おのれの肌に刃を立て、刀を引いて、ぴ、ぴぴ、と、血をしぶかせたのだ。(お(かみ))皮膚を食い破り、脂肪とその下に潜った真剣(ほんみ)が引かれていく。世道は、燃えるようなおぞけを腹底に抱えている。
 「う、お、おお」刷雄は、そうやって、金創(きず)をこうむった右腕を掲げて、ぼたぼたと、雨水混じりの血流を、小泉川へと落としていく。
 
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