習合 節卅四

文字数 423文字

 それは、まるで、(みの)をまとっているかのように映った。あちこちに、細い先端が飛び出している、胴体の輪郭、手足。しかし、それは、植物の茎を枯らしたものなどではない――それよりずっと、筆先のように細く、密な、獣毛であり、毛皮。それが露わになっている、裸形。
 毛むくじゃらの人影が、ひょこひょこ、左右に振れるかのように、案山子のように頼りなげで、案山子のように意味深に、小躍りし、進んでくるのだ。そんな、毛むくじゃらの体をしていながら、肩より上は、完全に、どこかの

で、烏帽子もかぶらぬ異様な風体で、にへらにへら、赤らんだ顔の相好を崩していた。しまりのない大口からは、尖った歯牙がのぞくものの、脅威より、怪奇を色濃く感じる。四十男の両目が、犬のもののように、闇の中でテラテラ赤く光るのが、不気味と言えば不気味だった。
 ヒ、
 ヒョー。
 という笛のような音は、どうやら、この怪物が、ヘラヘラ笑いを浮かべている、その口から、漏れてくる、鳴き声のようだった。
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