まつろわぬ民 節百四拾七

文字数 511文字


 その聖なる金属を採掘し、鍛える能力をもった氏族が、海を渡り、全国に入植し、鉄器を用いたおうせいな土木で、農地をひろげていく……
 この光景は、人類史に属するのだ。
 本邦の場合、その祭神となったのが、八幡神だった。その司祭が、秦氏だった……
 こういう、古代的な活況を呈していた

に、いつか、中央の貴族がやってくる――
 平将門が、いや、その父良将(よしまさ)が坂東に下向してきたとき、さむらいたちは熱狂しただろう――皇胤、きたれり――! 良将は、武家平氏の実質的な祖とされる……
 かれらが、坂東太郎の水勢を引き入れ、おおいに耕された関東平野を目にしたとき、なにをおもったか……上総、常陸、上野は、その石高ゆえに「大国」に分類され、親王任国にさだめられていた……
 だが、その、とうの親王はここにはいない――
 ただ、桓武天皇の系譜に属する、おのれら「平氏」がいるばかり――豊穣な国土がある……
 精強な兵力がある……!
 武士がいる――!
 八幡神が、将門に反乱を託した……それは、まつろわぬ神の本性だった。国をわるほどの稜威(いつ)をになうものの宿命だった――
 
 いつか雌雄を決さなくてはならない――
 
 矛と盾は
 
 たがいに無関心ではいられない……!
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