まつろわぬ民 節百十五

文字数 367文字


 いかに雲上におはされるおかたであろうとも、そのお独りきりの御寝(ぎょしん)のおすがたは、まさか、寝穢(いぎた)のうないものの、端然としておられるばかりではあらせられぬ――
 
 ことに、御寝のまま、御おもんぱかりにふけられる際など――
 
 そのおかたは、板間に方正に敷かれた畳としとねの上……まさか御衣(おんぞ)ではのう、絢爛な刺繍のほどこされた絹の布団の下で、枕をのけ、ざっけのう、御(かいな)そのものをあたまに敷いて、()っと、寝殿の天井を見上げておられた……
 
 よも、この京洛をひたす運命の潮目(タイド)……
 
 いや、それは時流といってもよかろう――(くろがね)の意志に、きづいておられぬはずもない……
 
 寝耳に水、どころではない……
 
 時勢は、王位を引きさらう凶猛な牙ともなろう……
 
 万乗の君がお気づきになられぬはずがない……
 そのうえで――
 
 「


 
 と、おっしゃられたのだ――
 
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