まつろわぬ民 節九拾四

文字数 616文字

  
 辻を過ぎ、つぎなる辻へとやってくる……まったく、辻にはことかかぬ都市だ。
 条坊制――(たていと)(よこいと)がいくえにもまじわっている……
 経緯をたどり、由縁をたずねる……
 ひょうすべの列はすすむ……今、最高潮(クライマックス)をむかえつつある歴史の転換点を――その潮目を、海鳴りを、たれが感じ取っていただろうか……
 こころさわぐ――
 刷雄は、その原因を、神輿に鎮まっておられる神鏡にもとめていた――清澄な水面……けがれをゆるさぬ純化(ピューリファイ)の精髄……
 浄化(クリアランス)の秘力が、神輿からあふれ、こんこんと自分たちをひたしているのだと……
 だが……
 (かくも、烈しいものかや――?)
 「烈」という、その一字には、はげしい、というほかにも、
 ひとつみちからはずれない……という意味がある。
 (みな)(やぶ)れて前に在り、という、九字の用法をみるかぎり、こわれる、やぶれる、という意味もあろう――
 くわえて、その字面をつぶさに見れば、なにやら、花が散り、花弁がまっているようでもある……
 つらぬく、というのは、そういうことだ――はげしく、一本気で、その忠烈ゆえに、
 やがてやぶれるさだめにある……
 花ちるように。
 (桜)
 (はな)――
 そういう、華の気配がした……ぜったいにゆずれない。
 そういうものが、あつまってきている。
 複数――
 ……会戦する!
 
 それは、天下の分け目に相違ない……
 
 (なんなのだ?)心臓の鼓動――
 ばくばくととどろく、うみなりの音……
 

――
 それはやってくる!
 
 
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