ひょうすべの誓い 節廿四

文字数 495文字

 こうして、中国大返しがはじまる――「上様の(あだ)を討つ」それは、天下への道につづいているかどうかはぬきにしても、通過せねばならない過程(シークエンス)だ。
 「仕事」をあたえられたひょうすべはつよい――あわれなことに、この点、官兵衛のねらいどおりだった。中国大返しのだんどりと進行は、みごとなものだ――水も漏らさぬ……いや、高松城を水攻めでおとしたことを考えると、これは意味深な言葉になってしまうが。
 ちなみに、妖怪としてのひょうすべは、九州に出現する河童である。
 
 秀吉は、急ぎ毛利と講和した――土煙を蹴立てるようないきおいで、備中高松を発ったのが、六月四日の午後。翌日には、毛利軍は、本能寺の変のしらせをうけている。吉川元春は追撃を主張し、小早川隆景は講和を遵守すべきと、両川家(吉川・小早川)の意見はわれた。
 毛利輝元は、キャスティングボートを握っていた。
 イニシアティブも。
 それどころか、へたをすれば、
 
 ヘゲモニーも……
 
 ここで毛利軍が一挙追撃に投じれば、第三次信長包囲網の主役が織田家討滅にうごいたということになり、光秀の天下は百日ではおわらない――すくなくとも、大混乱になり、天下は割れる……
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