まつろわぬ民 節七

文字数 390文字

 境内に響く二拍手は、陰陽であり、阿吽で、霊感に響く。
 神社の奥から、正装した徐福と、兵主神社の神官たちが現れる。牛頭六臂の乱神が見下ろすたもとで、両者は邂逅する。「よう来てくれた。図書頭、図書少允(しょういん)」「まあ、願ったり叶ったりというところよ」世道は、居住まいを正し、深々と頭を下げる。「神事の末座を汚さぬよう、相つとめさせていただきまする」「――ふ。上善水の如し。上手から下手へ流れるものじゃ」徐福が、おのれのあごひげに触れる。「もともと、おぬしらの始めたことよ。われらこそ、陪席させていただく身――」「滅相も」「上流も下流もあるものかい」刷雄が言う。「行き着くところまで行き着いて、今日の仕儀じゃ。上下も本末(もとすえ)もない」
 そういう、わけのわからぬ状態になってしまっている――判然とせぬ、あいまい、朦朧とした、魍魎のごとき……ぬえのような事態に。
 ひょうすべが、そうなってしまっている。
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