習合 節十五

文字数 309文字

 早良親王が、蝙蝠扇を、くい、と、下げる。空中から、碁盤目の条坊を見下ろし、悪所の枡目、もとい、線と線、つまり、条(東西路)と坊(南北路)が交わる、()を指す。
 布石せん。
 数匹の蝙蝠が飛び、呪詛となる。黒石のごとく、悪所の辻に、覆いかぶさる。(あなたを押さえ、(しちょう)〈囲碁の手筋〉へ追い込んでくれるわ)
 と、
 
 ぱ、
 し。
 
 「はれ」「おお」と、輿上の早良親王が、百鬼夜行が、声を上げる。早良親王の呪詛が、祓われた。黒石と化していた蝙蝠が、悪所から射られた征矢に、貫かれた。
 黒石を払いのけ、そこに歴然と、
 (白)
 白石が、打たれる。
 黒石は陰、白石は陽。
 そして、同じく陽を象徴する「赤」が、ひるがえったのだ。蚩尤旗。
 
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