まつろわぬ民 節五拾二

文字数 365文字

 それは矛――それは盾。
 邦人と異邦人――その両者が車の両輪となり、ヤマトと蕃別が、国を拓く……
 その営々たる時――栄光の日々!
 だが、だめだ。
 矛盾を棚上げし、それゆえ、諸豪を慴伏(しょうふく)させるダイナミズムを発揮して…… 
 応神天皇以来、両者は結託し、兵主・八秦(やわた)と神功皇后のごとく寄り添って、本邦を、朝の統一へ帰してきた。
 それでも、だめだ。
 矛盾している――なのに、

 矛が、
 盾を、

 

……!

 対抗心の一つもなく、強大となり、いまやおのれを呑み込もうとしているかつての隣人を、受け容れられるものか……!
 

……!
 阿諛追従(あゆついしょう)という――!

 (まつろ)う民としてあった――それは認めるにしても……

 屈服することまで(うべな)えるものか……!
 
 われらはわれら――
 だから、秦は、こう主張する……

 〝われらはちがう〟――
 


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