まつろわぬ民 節廿九
文字数 437文字
國稚く浮きし脂の如くして、海月なす漂へる時
と、古事記にしるされているシチュエーションがある。冒頭、劫初、天地の開けた当初の本邦だ。おそらくは、海洋のように茫漠とした、羊水にも似た原初のスープ。
於是 天つ神 諸の命以ちて
伊邪那岐命
伊邪那美命
の二柱の神に詔たまひて、
この漂へる國を
修め理りを固め成せと、
天沼矛を賜ひて、
言依さしたまひき。
方相氏の矛が、魍魎の終止符を成す。それは混沌に打ち込まれたくさび、卵のひび。
童歌に曰く。おうさまのお馬と兵隊をみんなあつめても、もうもとにはもどらない。
故 二柱の神 天浮橋に立たして、
その沼矛を
指し下ろして
畫き(掻き)たまへば、
鹽
許袁呂
許袁呂に
畫き鳴して
引き上げたまひし時に、
その矛の末より
滴り落つる鹽、
累なり積りて島と成りき。
是、淤能碁呂島なり。
ハンプティ・ダンプティころんだ。
虚は実へ。
混沌は秩序へ。
宇宙に。
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