まつろわぬ民 節百

文字数 755文字


 ひょうすべたちが、神輿から、かれらが護持する宝物を取り出す――神鏡。
 外気に触れれば、それだけで、周囲を清澄にする、清気の中心点となる――まるで、周囲を、明鏡止水の水鏡そのものにするかのような――霊験あらたかな、ご神体。
 それが、持ち運ばれる――
 
 差し出されるのだ――
 
 ひょうすべに……
 
 同じ同朋(どうぽう)……氏子にあれば、氏族の宝を見せることに、なんらさわりはない……
 そう言うかのように。
 純水と純粋の波動を波紋とちらして……
 
 神鏡が、神官らに担われて、ひょうすべをうつしだす……
 
 鏡は、水鏡のように、ひょうすべをうつしとる――そして、本当にすみ渡った水面よろしく、
 
 透徹して、深みまで、のぞかせるのだ。
 水底にあり、波風にも一石にもかき乱されぬ、ほんとうの自分を、見出させるのだ。
 
 あまのじゃく――
 
 それだって、直視できないおのれの一部分だ……!
 
 ああああああああああああああああああああ~~~~~
 
 血風が吹きすさぶ――
 軍列が駆け、彼我が衝突し――
 血潮が飛び散る――珠が散る……
 草刈るように、振るわれる利器……
 
 鉄が。
 (てつ)が。
 
 (えびす)(かね)と書いても「銕」――
 
 王の金(なり)と書いても「(てつ)」……
 
 雄、
 雄、
 雄々おおお(おん)
 
 衝き上がる――
 (くる)
 刷雄は、あの、天へと不羈(ふき)と不屈をちかうかのような……
 不撓不屈の神(ドーントレス)をかんじるのだ……
 ダウンしない――
 
 山岳のごとく(かさ)を増す……反逆(アップライズ)の神――
 矛を(さか)しまにして、
 天へと楯突く、
 
 まつろわぬ神……!
 
 蚩尤が――牛頭の、瓔珞(ようらく)をまとう六()の武神……
 それが、
 兵主部(ひょうすべ)と、
 ひょうすべを
 見下ろしている……
 
 (ああ)
 産霊(むす)び直すのだ――彼らも。
 旧約(オールド・テスタメント)より、
 新約(ニュー・テスタメント)へ。
 
 神と人と――
 鉄のさだめ……!
 
 (つはもの)どもが――
 
 武士(さむらい)の夢を!
 
 
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