まつろわぬ民 節五拾五

文字数 669文字

 お、
 阿、
 あ、阿あ()~。
 ビリビリと、霊感に響いてきた咆吼は――なんだったのだろう……長岡――兵主神社……
 いや、近江、大和、播磨、備後、そして壱岐(いき)……秦氏の、渡来と伝来の既往を謳うかのように建立された、兵主神社に鎮まられておられる……
 兵主――蚩尤。
 反逆(アップライズ)の神……まつろわぬ神――それが本然だというのに、おもえば、無茶をしたものだ。
 京城の守護神に……
 (すべては、われらが都合――)
 供物にした――差し出したのだ。天朝に――守護神を。
 (もう一度だけ、機会をお与えください)
 暗闇から出てきた牛よ……もう、その角を矯めはすまい――圭角(かど)を丸めることなく、そのために(うと)まれ、(アウトサイド)へとおもむき……
 
 歴史の闇に埋没するとしても……
 
 (御身とともに――御身こそが、われらがありよう)
 断じて、わけのわからぬ妖魔(はい)などではなく――
 武の神。
 

の神。
 武。それは、存亡の際で、絶対にないがしろにされない合理の現場。
 合理という現実。
 声高に現実を唱えられる楽園―― 
 かつて、未開と未明にあった、

と同様……
 (背くぞ――

よ)
 そのことを半身を断たれるように思う――そんな気持ちもある。
 だが、戦鐘(ゴング)を聞いた――われわれは、わけのわからぬものになどならない……
 兵主部(ひょうすべ)は、いかねばならない――
 (どうか)
 そう祈りながら――祈りのか細さを味わいながら……ゆかねばならぬ。
 武は裏切らない。
 故にわれら、武にしたがい、野に逼塞し、雌伏の時を持たん……雄飛と尚武、その先の捲土重来を夢見ながら。
 まつろわぬ民は、反逆(アップライズ)の気運を待つ――
 
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