まつろわぬ民 節百卅五
文字数 499文字
刷雄が、「耳」に奇異のイメージをうけたのも、まさに、この効果だった。(ばけものか)という印象、吹き返しが広がるシルエット。
――そう、かれらは、自分たちよりも幾世紀もさきをゆく軍勢をまのあたりにしていた……
装備が、軍団の背景になっている文化や思想をかたる……中央の統制された軍団にしては、自己主張がはげしすぎる色彩、よそおい……おそらく、地方の有力者がそれぞれ武装し、郎党をひきいている……
まるで、祭事だ。着色された札を、あざやかな糸で縅した、鷲羽根のようにかさなりあい、見事な縞をえがくよろいをまとっている。これが、本朝の軍団か? かれらが社や寺につどっていれば、あまりに絢爛な彩色が、清浄な雰囲気をぶちこわしにしてしまう。これらのグラデーションにまつわられた軍団は、大陸の道観(どうかん、道教寺院)など、中華の、こちらのキモをひしぐほどのあでやかないろづかいの渦中にあったほうが、よほど調和する……
異国を直感させる軍団……色使いや多層を重複する構造がわずらわしい、夥しい、という言葉をつかってもいい。豊かな資源と財力と、技術力をほこっている――そればかりを前面におしだしたがっている……
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