まつろわぬ民 節廿七

文字数 720文字


 小さいもの、子供や小鬼といった連中は、どうも、下手に大きな連中より、不気味で、不可思議で、神秘に満ち、根元に足を置いているように思える。座敷童、と、まずは、かわいい例を出しておくが、例えば、一つ目小僧は、独眼巨人ポリュペーモスとは異なる怪奇が、小僧であるが故に漂っている――まあ、むしろ「一つ目妖怪」に分類した方いいモチーフだが――。一寸法師やスクナビコナの神秘性は、花弁に隠れるフェアリーに通じるものだ。
 童心。
 混沌に半身を浸している、社会に属しきらぬその未知と怪奇――まったく、かつておのれが通ってきた既往とは思えぬ暗闇を、小さきもののけは、象徴している。
 ゴブリンという、すっかりおなじみになったあのファンタジーの小悪党どもも、まさに、この驚異に足を置いている小悪魔だろう。小さい――幼い……それ故に、大人の物差しでは測ることのできないアウトサイダー――混沌の稚児。法律にも道徳にも準拠しない、どんな非道をやらかすのか想像もできない黒い奇想……
 小さいこと――
 連想がまた飛ぶが、メアリー・ポピンズの作品世界では、赤ん坊は根元の叡智を持ち越していて、小鳥やそよ風、日の光などとおしゃべりをする。この叡智は、成長によって早々に失われてしまうのだが、赤ん坊が、ムクドリとその子供に、自分がやってきた根元について話す場面がある。
  「わたしは、土と空と火と水なの。」と、しずかにいいました。「わたしは闇のなかからきたの。なんでも、はじまりはそこなの。」 (中略)
  「わたしは、海と潮からきたの。」と、アナベルがつづけます。「空と星からきたの。太陽と輝きからきたの――」                  (林容吉訳)
 小さきもの――
 
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