ひょうすべの誓い 節卅六

文字数 405文字

 秀吉は、天正十二年、空白の十二月の翌年、関白となり、正親町天皇から、「豊臣」の姓をさずかっている……
 ここまできた――
 ――さぶらふものは、あだやおろそかにはいたしませぬ!
 そう誓い、地方に身を置きながら、皇祖神の双璧として、アマテラスに向き合ってきた……
 それがついに、関白となり、さぶらふ(つはもの)どもは、万乗の君に近侍する……
 
 上古、雄略天皇のおそば近く、琴を演奏し、うずたかく絹をつみあげ献上した、秦酒公のように……
 
 周防と中央が、まるで背中合わせに!
 
 「ふん」秀吉の関白宣下を知った輝元は、書状を手にしたまま、おのれの体熱の余剰があふれていくのを感じていた。
 ひょうすべの血が脈打っている……
 「まあ、依然、戦国の(ほとぼり)のうちよ
 「下克上
 「由来も知れぬ馬の骨が、堂上につらなることもあろうさ」
 それにしても……
 「われら
 「ひょうすべがよ」
 くつくつと、わらう――背を丸めて。
 その肩が、震えていた。
 
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