ひょうすべの誓い 節七拾八

文字数 543文字


 ここからの輝元のうごきは、峻烈としかいいようがない――九州で大友義統を決起させ、阿波の蜂須賀家当主を身柄確保、四国にも軍勢を派遣し、徳島城を占領する。藤堂高虎領や加藤嘉明領でも、毛利勢や旧小早川勢を動員して戦闘を開始する。
 西上する家康も、気が気ではなかった……
 
 大毛利の貫目――それを、自重を辞めたひょうすべが、ぞんぶんに機略で切り回のだ……
 
 家康は、気づいていただろうか――自分が、自分とよく似た相手と対峙していることに……
 仰徳(ぎょうとく)大明神――毛利元就公のきずいた、大版図と、「中国ものの律儀」という全幅の信頼(トラスト)が、家康同様、化けの皮をかぶりつづけた男の大いなる遺産(グレート・エクスペクティション)が、輝元の行動を支えている……! 輝元自身も、秀吉から「中国の本式者(正直な好漢)」と評され、祖父の遺産をふやしていた。
 
 その輝元が、当初から、家康への対決姿勢を鮮明にしている! ――家康が、豊臣家恩顧の諸将をも味方につけたには、「内府(だいふ、家康)に従っていれば、決して悪いようにはなされぬ」という、これも、信頼が基盤になっている……
 
 なのに、日本が、東西に割れた――
 
 天下の副将軍、周防の帝王が、内府家康に並ぶものだったのだ――西日本が、地響きを立てるようにして、東軍を迎え撃ち、呑み込もうとする……!
 
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