第255話 コレ盗撮だぞー

文字数 2,049文字

「へー、箕輪さんってカバディやってたんですね」
「夫と結婚してから現役は引退したましたけどね。全盛期の頃は日本代表まで行ったよ」
「ええ? それってメチャクチャ凄いじゃないッスか?」
「日本代表と言う言葉はどんな競技でも揺るぎ無い響きですな」

 四人は談話をしながら山道を進む。
 その時、進行方向に向けた懐中電灯の光が細長いタキシードを着たモノを映した。

「うぉ!? スレンダーマンっス!?」
「岩戸さん、知ってるのかい?」
「海外で有名な怪異ですな」
「へー、そうなんだ」

 ヨシの言葉に茨木は、拳と手の平をパンッと打ち付けて前に出ると不敵に笑う。

「楽しみだ」
「……」

 懐中電灯の光が明滅するとフッと消え、次につくとスレンダーマンの姿は居なくなっていた。

「チッ、逃がしたか」
「……茨木さん。ぱねぇっす」
「スレンダーマンって結構有名な幽霊なのかい?」
「一部の地域では死神とも言われておりますな」

 とりあえず殴れそうなモノは殴りに行くスタイルの茨木に他の三人は、これ肝試しにならないな、と思い始める。

「箕輪さん、興味本位で夫さんとの馴れ初めを聞いて良いですか?」

 進行を再開した際に茨木が箕輪に話題をふった。

「別に普通ですよ? 共通の趣味で知り合って、女だからって馬鹿にされてた所を夫が割って入った所が出会い」
「今でも仲睦まじい感じっすよね!」
「そう見えるかい? あまり意識はしていないけど」
「知れず知られずに一定の距離を保てるのは互いに相手を考えている証拠ですな」
「私としては、茨木さんやヨシさんの方が気になる所だけど」
「おっと、話題を切り替えて来たね。それじゃ、初恋を暴露としようか。アタシの初恋はコイツ」

 茨木は拳を強く握って見せつける。

「茨木流槍術。アタシんちの看板ね」
「人間じゃないんっすか?」
「部活やってた時は何人かに告白された事はあったけどね。ピンと来るのは居なかったなぁ」
「おお! どんな人から告白を?」
「主に女子」

 茨木の言葉に、女受けは良さそうだよなー、と三人は納得する。

「まぁ、こんな背の高い女は男に需要は無いからサ。姫の隣で色々告白されるのを見てきたけど、男って妙に見栄を張るんだよねぇ。自分よりも身長の高いって女は対象外らしいんだよ」

 茨木も恋愛は諦めている。それよりも幼馴染みの姫野の様子を見ている方が今も昔も楽しいのだ。

「確かにソレは正解かも知れませぬな」

 自分の身長に若干のコンプレックスを感じさせる茨木の発言にヨシ君が口を挟む。

「人の外見だけで始まる異性の関係は永く続きませぬ。茨木殿は武を学ぶ傍らで、 自身に向けられるソレを判別する眼が自然と養われたのでしょう」
「へー、嬉しい事いってくれるじゃん。ヨシよ」
「ほっほ。茨木殿は心身ともに素晴らしい女性ですからな。その事実に世間の男が気づく日もそう遠くはありますまい」
「そ、そうかな」

 自分の事を紳士に褒められて、茨木は若干照れる。
 茨木さん、こんな表情するのかー、と箕輪と岩戸は微笑ましい視線を向けた。

「ヨシはさ。初恋とかあったでしょ? あんまり浮いた話とか聞かないけど、そこん所はどうなのよ?」
「我輩の初恋は二次元でしたな」
「おいおいー、そんな常套句で逃げようとても駄目だぞー」
「ほっほ。我輩もこのように少し特殊な口調である身。付き合う者は自然と選別されて行ったのですぞ。強いて言うのであれば、大学の法学部に特別講師に来た鬼灯殿に惹かれましたな」
「あー、鬼灯さんはわかるわ。そういや、二人は弁護士つながりだったな」

 女でもドキリと来る存在の鬼灯は昔から多くの人に言い寄られていたと想像できる。

「これが、当時の写真ですぞ」

 ヨシ君はスマホに残っている、講師に来ていた鬼灯の写真を全員に見せる。
 今よりも若く、完美に達する前の可愛らしさを残す一枚だった。

「うわ……何となく若い頃は凄かったんだろうなーって思ってたっスけど……この時に鬼灯さんに出会ってたらウチも惚れてたっス」
「写真越しでもこれとは……鬼灯さんは本当に人類なのかい?」
「うわー、やべー。この頃の鬼灯さん、自動で魅了(チャーム)ばら蒔いてるじゃん。て言うかヨシ、コレ盗撮だぞー」
「鬼灯殿には許可を頂いております。最初は拒否しておられましたが、我輩の説得で特別に、この一枚は許容して貰った次第です。大学では英雄扱いでしたぞ。ちなみに大学の男の九割はこの写真を所持しておりました」
「こんなのが街中歩いてたら誰だって声をかけるっスよ」
「ちなみに、別アングルで盗撮した者や、当時の八割のカップルが別れましたなぁ。その後、鬼灯殿に告白した者やストーカーに走る者が多々おり、過剰な行動に走ったを者は全員、鬼灯殿に訴えられておりました。教授も含めて」
「大量検挙じゃん。大学崩壊してんじゃんよー」

 あはは、と笑う茨木。
 当時は大波乱でしたぞ、とヨシ君。
 人間災害みたいな人っすね、と岩戸。
 学校の就職案内には呼べない人だな、と箕輪。

 今も昔も話題に事欠かない鬼灯の事で盛り上がっていると、霊碑が見えた。
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登場人物紹介

鳳健吾(おおとり けんご)。

社会人。26歳。リンカの隣の部屋に住む青年。

海外転勤から3年ぶりに日本に帰って来た。

所属は3課。

鮫島凜香(さめじま りんか)。

高校1年生。15歳。ケンゴにだけ口が悪い。

鮫島瀬奈(さめじま せな)

XX歳(詮索はタブー)。リンカの母親。ママさんチームの一人。

あらあらうふふなシングルマザーで巨乳。母性Max。酒好き。

谷高光(やたか ひかり)

高校1年生。15歳。リンカの幼馴染で小中高と同じ学校。雑誌モデルをやっている。

鬼灯未来(ほおずき みらい)

18歳。リンカの高校の先輩。三年生。

表情や声色の変わらない機械系女子。学校一の秀才であり授業を免除されるほどの才女。詩織の妹。

鬼灯詩織(ほおずき しおり)

30代。ケンゴの直接の先輩。

美人で、優しくて、巨乳。そして、あらゆる事を卒なくこなすスーパー才女。課のエース。

所属は3課。

七海恵(ななみ けい)

30代。1課課長。

ケンゴ達とは違う課の課長。男勝りで一人称は“俺”。蹴りでコンクリートを砕く実力者。

黒船正十郎(くろふね せいじゅうろう)。

30代。ケンゴの勤務する会社の社長。

ふっはっは! が口癖で剛健な性格。声がデカイ。

轟甘奈(とどろき かんな)。

30代。社長秘書。

よく黒船に振り回されているが、締める時はきっちり締める。

ダイヤ・フォスター

25歳。ケンゴの海外赴任先の同僚。

手違いから住むところが無かったケンゴと3年間同棲した。四姉妹の長女。

流雲昌子(りゅううん しょうこ)。

21歳。雑誌の看板モデルをやっており、ストーカーの一件でケンゴと同棲する事になる。

淡々とした性格で、しっかりしているが無知な所がある。

サマー・ラインホルト

12歳。ハッカー組織『ハロウィンズ』の日本支部リーダー。わしっ娘

ビクトリア・ウッズ

30代。ハロウィンズのメンバーの一人で、サマーの護衛。

凄腕のカポエイリスタであり、レズ寄りのバイ。

白鷺綾(しらさぎ あや)

19歳。海外の貴族『白鷺家』の侯爵令嬢。ケンゴの許嫁。

音無歌恋(おとなし かれん)

34歳。ママさんチームの一人で、ダイキの母親。

シングルマザーでケンゴにとっては姉貴みたいな存在。

谷高影(やたか えい)

40代。ママさんチームの一人であり、ヒカリの母親。

自称『超芸術家』。アグレッシブ女子。人間音響兵器。

ケンゴがリンカに見せた神ノ木の里

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