第102話 ヤクザVSユニコ君。(^o^)

文字数 2,238文字

 雑居ビルに着いた組の面子は、ワゴン車から降りるとぞろぞろと外に出る。交通法を無視した、驚異の10人乗り。それだけ、本丸を押さえ込むには必要な人員なのだ。

「武藤のカシラ。今到着しました」

 人員の中で、一番位の高い助手席に座る男が自分達に命令を出した男へこれから突入する旨を伝える。

「ヘイ」

 最後にそう言って通話を切る。彼の号令を待っていた面子に、よし行け、と言うと、どかどかと雑居ビルへ入って行く。

「なんだ?」

 しかし、それは二階へ続く階段が塞がれていた事で止まった。





 オレは初代ユニコ君を装備し、雑居ビルに入った。意外にも動きやすく、馴染む感じだ。テツ曰く、修復と同時に最新の素材を内部に使ってるとか。それより外を綺麗にしろよ。まったく……

『この眼で初代が動く様を見れると、は!』
『ケン兄。視界とか大丈夫?』

 オレは耳につけたイヤホンマイクで、テツとヒカリちゃんから情報を受け取っていた。
 なんでも、外に変化があったら逐一教えてくれるとのこと。

「大丈夫だけど……階段はちょいキツイな」

 人間に合わせて設計された建物は地味にユニコ君では上りづらい。古い建物で手摺も無い事もあり、普通に上る3倍は時間がかかる。やっぱり、顔だけ隠せる何かを探すべきだったか。

「ぬ?」

 と、オレは階段の曲がり角で身動きが取れなくなった。狭くなる踊り場をユニコ君では抜けられなかったらしい。
 しばらく試行錯誤したものの、押すも引くも出来なくなり、ため息を吐く。

「テツ、ユニコ君。脱ぎ捨てるわ」
『なな?! 何を言うか! 格納庫以外でユニコ君を脱ぐなど言語道断! 天罰が下るぞ!』

 どこの神様が落とすんだよソレ。

「いや、身動き取れねぇから。顔を隠す以前に上に行けなきゃ意味ない――」
「なんだ?」

 すると第三者の声。知った人間のモノではない事から、例の増援だと瞬時に察する。

「おいぃ! テツ! 来てるじゃねぇか!」
『失念していた! マズイ!』

 マズイ、じゃねぇ! 色々と絶体絶命なのはこっちだ。





「なんだこりゃ?」

 男は階段を塞ぐ白い壁に困惑していた。

「それ、ユニコ君じゃね? なんでこんなところで詰まってんだ?」
「お前ら何やってんだ。さっさと行け」
「いや、城之内のアニキ……ユニコ君が」

 場を取り仕切る城之内は舎弟を押し退けて列の前まで来ると、

「――こ、こいつは! 初代ユニコ君じゃねぇか! この刀傷! 弾痕! 返り血の跡! 間違いねぇ! 格納庫で眠ってるハズが……誰だ! この英雄を動かしてる不届きな野郎は!」

 出た、アニキのユニコ君崇拝。と舎弟達は初代ユニコ君に憧れて組に入った城之内から耳にタコが出来るほど、ユニコ君の武勇伝を聞かされていた。
 彼からすれば、ユニコ君は聖獣であり、英雄であり、神であるのだ。特に初代に対するリスペクトは武藤でさえも圧される程である。

「お前らユニコ君を助けてやれ。そんでもって中のヤツを引きずり出して沈めろ」

 中の人は逃がしてやるか、と城之内のユニコ君愛に振り回される舎弟達は通路に詰まっているユニコ君を、すぽっ、と助けてやった。

「オウ! テメェ! 誰に断って初代を着てやがる! 顔見せろ――」
「ゆ、ユニコォォォン!!」

 その時、ユニコ君は鳴くと城之内に体当たりをかました。着ぐるみと中の人による質量に城之内はあっさり吹っ飛ばされると、階段を転げ落ち、ケツを付き出す形でくの字に気を失う。ヒヨコがくるくるとケツの上を回っている。

「アニキィ!?」
「うわ?! 愛に噛まれた!?」
「アニキに何すんじゃ! ユニコ君!」

 舎弟の一人がユニコ君に殴りかかる。しかし、ユニコ君は微動だにしない。それどころか、薄暗い照明で影がかかり、不気味さを漂わせる。

「ユニコォォォン!」

 ユニコ君が再び鳴く。今度は両手ラリアットで、踊り場にいた舎弟達を一気に吹き飛ばした。
 うげ?! ぎゃあ?! と舎弟達も城之内と同じように階段を転げ落ちる。
 なんだ? なんだ? と階段前にいた残りの舎弟達は薄明かりから降りてくるユニコ君を見た。

「ユニコォォォン……」
「お、お前ら! ユニコ君を倒すぞ!」

 ヤクザVSユニコ君。(^o^)





「むむ……始まってしまったか」

 テツは外に飛ばすドローンの映像をPCに映し、一階の様子を見ていた。(公共の場でドローンを飛ばすのは危険なので絶対に真似をしないでください)

「始まってしまったか……じゃないでしょ!」

 ヒカリはどうしたモノかと額に手を当てる。通報が一番か。いや、それでは手を出したケン兄も捕まるかもしれない。あぁ、もう! 最初からパパに頼めば良かった!

「ふむ。しかし、流石は初代。優勢、だ!」

 映像の中でのユニコ君は囲むヤクザ達を次々に相手をして圧倒している。
 建物の入り口内部が狭いと言う事もあるだろうが、あの着ぐるみで飛び蹴りとかを平然と繰り出すケンゴの身体能力も中々だ。

「この映像って……上も映せる?」

 と、ヒカリはPCを見るテツの横から話しかける。もう、彼のキャラには慣れた様子。

「可能、だ!」

 ドローンのコントロールはこちらで出来る。

「屋上を映して」
「御意」

 取りあえずユニコ君は問題なさそうなので、カメラは一階から屋上へと移動する。
 そこでは――

「むむむ!? これは強者の集い!」
「――リン……」

 そこに捜し続けたリンカの姿が。しかし、彼女は対峙する大宮司と仮屋の行方を見守ってる様だった。

「もう……さっさと逃げなさいよ」

 ヒカリはリンカにLINEする。
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登場人物紹介

鳳健吾(おおとり けんご)。

社会人。26歳。リンカの隣の部屋に住む青年。

海外転勤から3年ぶりに日本に帰って来た。

所属は3課。

鮫島凜香(さめじま りんか)。

高校1年生。15歳。ケンゴにだけ口が悪い。

鮫島瀬奈(さめじま せな)

XX歳(詮索はタブー)。リンカの母親。ママさんチームの一人。

あらあらうふふなシングルマザーで巨乳。母性Max。酒好き。

谷高光(やたか ひかり)

高校1年生。15歳。リンカの幼馴染で小中高と同じ学校。雑誌モデルをやっている。

鬼灯未来(ほおずき みらい)

18歳。リンカの高校の先輩。三年生。

表情や声色の変わらない機械系女子。学校一の秀才であり授業を免除されるほどの才女。詩織の妹。

鬼灯詩織(ほおずき しおり)

30代。ケンゴの直接の先輩。

美人で、優しくて、巨乳。そして、あらゆる事を卒なくこなすスーパー才女。課のエース。

所属は3課。

七海恵(ななみ けい)

30代。1課課長。

ケンゴ達とは違う課の課長。男勝りで一人称は“俺”。蹴りでコンクリートを砕く実力者。

黒船正十郎(くろふね せいじゅうろう)。

30代。ケンゴの勤務する会社の社長。

ふっはっは! が口癖で剛健な性格。声がデカイ。

轟甘奈(とどろき かんな)。

30代。社長秘書。

よく黒船に振り回されているが、締める時はきっちり締める。

ダイヤ・フォスター

25歳。ケンゴの海外赴任先の同僚。

手違いから住むところが無かったケンゴと3年間同棲した。四姉妹の長女。

流雲昌子(りゅううん しょうこ)。

21歳。雑誌の看板モデルをやっており、ストーカーの一件でケンゴと同棲する事になる。

淡々とした性格で、しっかりしているが無知な所がある。

サマー・ラインホルト

12歳。ハッカー組織『ハロウィンズ』の日本支部リーダー。わしっ娘

ビクトリア・ウッズ

30代。ハロウィンズのメンバーの一人で、サマーの護衛。

凄腕のカポエイリスタであり、レズ寄りのバイ。

白鷺綾(しらさぎ あや)

19歳。海外の貴族『白鷺家』の侯爵令嬢。ケンゴの許嫁。

音無歌恋(おとなし かれん)

34歳。ママさんチームの一人で、ダイキの母親。

シングルマザーでケンゴにとっては姉貴みたいな存在。

谷高影(やたか えい)

40代。ママさんチームの一人であり、ヒカリの母親。

自称『超芸術家』。アグレッシブ女子。人間音響兵器。

ケンゴがリンカに見せた神ノ木の里

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