第425話 ふふっ、神よ

文字数 2,168文字

「よし、これで後は“待ち”だな」

 オレはPS4とPS5を接続しデータ移行を開始。待っている間に色々とやることを済ませておこう。

「このカタログはここに隠しておくか」

 タンスの中にある隠し箱(シークレットボックス)に猫耳と共にしまう。この箱は部屋に入ってくるリンカ達に見られたら終わるモノを詰め込んだパンドラの箱なのだ。入ってるのは主に男の必需品。
 そして、過去の六年で一度もバレていないのでセキュリティは保証済み。
 リンカの居ない隙を見て、カタログはセナさんにも横流ししよう。

「まだ猶予があるな……」

 ちらり、と時間を見る。今、リンカは夕飯の真っ最中だろう。その後に風呂も入って来るとなると後1時間以上は間が空く事になる。

 ショウコさんとの夜の件。一体、どこまで知っているのかは未知数だ。いや……全て知っていると過程して話は進めた方がいいな。
 変に取り繕うよりも、その方が生存率は上がるハズ!

「貢ぎ物のカステラもある。さて……少しばかり状況を整理するか……」

 ショウコさんとの夜1日目。
 キャッ、おっぱいを触る、キス、添い寝。

「……」

 今思えば1日目からやべー事やってんな。風俗以外で、出会って数時間でやる男女の行動じゃない。
 しかし、まだ慌てる様な時間じゃない。この件にはセナさんが触れている。上手くすればヘルプをもらえるかも。

「よし、2日目だ」

 ショウコさんとの夜2日目。
 じゃんけん、混浴、洗いっこ、身内話、酔わせて就寝。

「……」

 序盤からクライマックスだったな。ホントに良く耐えたよオレ。
 しかし、酔わせた所はショウコさんも記憶が曖昧だろう。故にそのあたりに釈明の猶予があるかもしれない! 

「ある程度のシミュレートは出来たな」

 後は頭を垂れる練習だ! えっと……正座して、手は三角の空間を作る様に合わせて丁寧にお辞儀を――

 ピンポーン――

「な、なに!?」

 バカな! 早すぎる! PS5のロードも飯も風呂もまだだぞ!

 オレは音を立てずに扉に近づくと覗き穴からそっと外を確認。
 リンカ様ですわ。いつものTシャツに短パンを履いた、部屋着姿で扉の前にお立ちになっておりますわ。おほほ。

 ピンポーン――

 やべ。二度目を押された。とにかく開けるか。

「あ、どうも。お待たせして申し訳ありません」
「…………」

 二度のピンポーンを待たせて開けたオレに無言のリンカ。少しでも機嫌を取りたかった身としては、ちょっと掴みを失敗した。

「今日」
「はいっ!」

 ここで始める気か!? 近所迷惑になるから、部屋に入ってもらおう。

「泊まってもいいか?」

 そう言うリンカは強気な眼ながらも少し緊張した口調だった。
 いつもはLINEで一言断ってからやって来て、昼間は一緒にゲームや映画を観て、夜は各々で過ごすと言うのがオレ達の休日だ。
 リンカも年頃の娘なので、セナさんが不在でも無い限りは泊まりに来る事は無い。

「別に良いけど……セナさんは――」
「お母さんは良いって。入るぞ」

 そう言って部屋に入るリンカにオレは道を開ける。ショウコさんの件で糾弾する様な雰囲気でも無ければ、死神として執行する為に来たワケでもなさそうだ。
 でも、一応聞いておかないと……

「あのー、リンカちゃん」
「なんだ?」
「ショウコさんの件……だよね? 色々と聞きたい事もあるだろうし。お互いの認識をきちんと確かめておいた方が良いから、オレから説明させてくれないかな!!?」

 最後の方は必死な所が出ちゃった……

「別にその件はもういいよ」
「エ?」
「大事には成らなかったんだろ? ならもう何も聞かない」

 なんだ……? これはどういう事だ? 昼間は、きるゆー、って首の前で親指を滑らせる程の剣幕だったのに……今は軟化している。
 セナさんが説得してくれたのか? こちらに泊まりに来るならある程度の事情は話した可能性はある。

「PS5だ……。買えなかったんじゃなかったのか?」

 リンカが居間で接続中のPS5を見つけた。その口調はお宝を見つけた時の様な声。

「昼間の友達のお使いで譲って貰ったのサ。今、高速でダウンロードしてるから1時間くらいすればプレイ出来るよ」
「そうか」

 その前に色々と済ませておいて寝るだけにしておきたい。

「あ、そうだ。リンカちゃんは欲しいゲームソフトとかある?」
「何の話だ?」
「譲ってくれた友達が太っ腹でね。PSVRと1万円のギフトもくれたんだ。好きなソフトを一つ買えるよ」
「そっちが好きなの買えよ」
「どうせなら二人とも楽しめるゲームが良いでしょ? オレは風呂に入るから、リンカちゃんは情報を集めながら選定してて」

 そう言ってオレは浴室へ。リンカが選んでくれていれば何を買うにしても余計な手間は省ける。

「……待て」

 すると、リンカがオレの動きを阻止する様に服を摘まんだ。

「どうしたの――」
「あ、あたしも、お風呂は入ってない……」

 あっ。これは……ヤバい流れだ。度重なる経験から次の発言が予期できる。

「……そうなんだ。じゃあ、お互いに部屋で入ってから再度集合って事で! 扉は開けっ放しでもいいからね!」
「あ……」

 それじゃ! と少し強引にそう言うと浴室へ向かう。
 ふふっ、神よ。そんなにオレを地獄に落としたいかっ! でも人間は成長するものなのですよ! 残念だったな!

「待って――」

 と、リンカが背後から背中に身を寄せて来た。
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登場人物紹介

鳳健吾(おおとり けんご)。

社会人。26歳。リンカの隣の部屋に住む青年。

海外転勤から3年ぶりに日本に帰って来た。

所属は3課。

鮫島凜香(さめじま りんか)。

高校1年生。15歳。ケンゴにだけ口が悪い。

鮫島瀬奈(さめじま せな)

XX歳(詮索はタブー)。リンカの母親。ママさんチームの一人。

あらあらうふふなシングルマザーで巨乳。母性Max。酒好き。

谷高光(やたか ひかり)

高校1年生。15歳。リンカの幼馴染で小中高と同じ学校。雑誌モデルをやっている。

鬼灯未来(ほおずき みらい)

18歳。リンカの高校の先輩。三年生。

表情や声色の変わらない機械系女子。学校一の秀才であり授業を免除されるほどの才女。詩織の妹。

鬼灯詩織(ほおずき しおり)

30代。ケンゴの直接の先輩。

美人で、優しくて、巨乳。そして、あらゆる事を卒なくこなすスーパー才女。課のエース。

所属は3課。

七海恵(ななみ けい)

30代。1課課長。

ケンゴ達とは違う課の課長。男勝りで一人称は“俺”。蹴りでコンクリートを砕く実力者。

黒船正十郎(くろふね せいじゅうろう)。

30代。ケンゴの勤務する会社の社長。

ふっはっは! が口癖で剛健な性格。声がデカイ。

轟甘奈(とどろき かんな)。

30代。社長秘書。

よく黒船に振り回されているが、締める時はきっちり締める。

ダイヤ・フォスター

25歳。ケンゴの海外赴任先の同僚。

手違いから住むところが無かったケンゴと3年間同棲した。四姉妹の長女。

流雲昌子(りゅううん しょうこ)。

21歳。雑誌の看板モデルをやっており、ストーカーの一件でケンゴと同棲する事になる。

淡々とした性格で、しっかりしているが無知な所がある。

サマー・ラインホルト

12歳。ハッカー組織『ハロウィンズ』の日本支部リーダー。わしっ娘

ビクトリア・ウッズ

30代。ハロウィンズのメンバーの一人で、サマーの護衛。

凄腕のカポエイリスタであり、レズ寄りのバイ。

白鷺綾(しらさぎ あや)

19歳。海外の貴族『白鷺家』の侯爵令嬢。ケンゴの許嫁。

音無歌恋(おとなし かれん)

34歳。ママさんチームの一人で、ダイキの母親。

シングルマザーでケンゴにとっては姉貴みたいな存在。

谷高影(やたか えい)

40代。ママさんチームの一人であり、ヒカリの母親。

自称『超芸術家』。アグレッシブ女子。人間音響兵器。

ケンゴがリンカに見せた神ノ木の里

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