第338話 これは現実です!

文字数 1,943文字

「ようやく、坊っちゃんのワガママも落ち着いたねぇ」
「ふん。貴様らが居なくとも、荒谷はこの白山が屠っていたわ!」
「うっふっふ。本当に貴方はこう言う仕事に向いてないわね」
「俺たちの存在は既にここにしかない。お前達もそう言う覚悟で『国選処刑人』に成ったのだろう?」

 緑屋、白山、黄木、灰崎の四人は屋敷の一階ロビーにて待機していた。
 すると、ドッドッドッドッ! と言うエンジン音が外から鳴り響く。

「何だこりゃ?」
「ハーレーのエンジンだね」
「誰かバイクを持ってた人でも居るのかしら?」
「鉄の扉越しでもこれとは!」

 酷い騒音だ。ワザと、グイィン! グイィン! と威嚇するようにアクセルも吹かしている。
 この敷地内に入ってくる者は関係者以外には居ない。
 すると、エンジン音はピタリと消えた。

「止んだ……」
「何だったのかしら?」
「……」
「桃城! 何者が来たのだ!?」

 白山は表にいる桃城に無線で確認を取る。しかし、すぐに来るハズの返答が返って来ない。代わりに――

『すみません! 全員聞こえますか?!』

 防犯カメラと扉を管理する部下から連絡が入る。

『桃城さんがやられました! 敵の襲撃です! ユウマ様の安全を第一に考えて行動してください!』

 その言葉に四人の脳裏に浮かぶのは、たった一人で部隊を壊滅に追い込んだ『神島』だった。

「落ち着け」

 その情報に対して灰崎が応える。

「敵の情報を正確に伝えろ。何人で、容姿は?」
『数は六人です。男が五人、女が一人』

 集団? 『神島』ではない?

「姿は?」
『それが……その……』
「なんだ? ハッキリ言え」
『ジェイソン、ハントレス、剣道家、ハンク、ファウスト、スパイ○ーマンです』
「なに? ジェイ――なんだって?」

 あまりの色物具合に灰崎は混乱する。

「うっふっふ。ハントレスってなぁに?」
『DBDってゲームの斧投げてく来るキラーです』

 黄木は専用のスマホでハントレスの画像を検索する。

「じゃあ、ハンクってなんだ?」
『バイ○ハザードの死神ですよ!』

 緑屋もスマホでハンクの画像を検索。

「ファウストだと!? 一番と言う事か!? 意味わからんぞ!?」
『GGのデカイメス持ってるヤツです』
「メス……」

 白山はスマホをちょこちょこといじり、ファウストの画像を確認する。
 どれもふざけた被り物をしたキャラクターばかりである。

「……こいつらが攻めて来てるのか?」
『恐らく顔を隠しているのかと』
「最初からそう言え……」

 その時、鉄の扉が大きな音を立てて揺れる。その外からの衝撃に一瞬、ロビーに振動が響いた。

『あぁ!? ファウストが! ハンマーで扉を叩いてます!』
「ぬぅ!? ヤツの武器はメスでは無いのか!?」
『それはゲームの中の話ですよ! これは現実です!』

 部下の報告は真面目で正確だ。ふざけてる情報など何一つない。
 鉄の扉を挟んで全て行われてる現実だった。
 ドォン! と言うハンマーの一撃に、キンッ! と扉の角にある金具が壊れる。すると、次の一撃で鉄の扉が大きく傾いた。

「……」

 信じられない。まさか、本当に破ってくるつもりなのだろうか。

「青野、今すぐ――」

 灰崎が青野に無線を入れた時、ハンマーの音が止み、ギギギ、と、鉄の扉は内側に倒れる。
 外から射し込む夕暮れの光と、重々しく倒れた扉の土煙で入ってくる者達を一層、怪物に足らしめた。

 マッチョのジェイソンとマッチョのハンクが先にぬぅと入っくる。

「おいおい。悪夢かよ」
「中々に楽しめそうだな!」

 入ってきたソレに緑屋は苦笑いを浮かべ、白山は腕を組む。
 体格的にも相当な威圧のある二人。顔を隠しているモノも相まって、現実味がない光景だ。
 更にその後ろからマッチョのファウストが現れ、背の高い女のハントレスも入ってくる。

「あら♪」
「……」

 黄木はハントレスに目を向け、灰崎はファウストを見る。

「ホントに壊しちゃったよ……」

 先行して入ってきた四人に比べて比較的に普通な体格であるスパイダー○ンが、脇から覗き込む様にそう言った。





 無理だと思っていたが、大見さんとイントさんは本当に鉄の扉を壊してしまった。
 普通に犯罪であるが、まぁ、先にショウコさんを誘拐したのはあっちが先だし、なんならこっちは被害者だからね! ……って通じないよなぁ。

「スパイダー○ン。この中にジャックを叩いた者は居るかね?」

 剣道マンの赤羽さんが聞いてくる。
 オレは場の面々を見て、確認するが例の男の姿はない。

「この中には居ません。しかし、屋敷の中には居るハズです」
「ならば二階を捜そうか」

 まるで友達の家に入ったかのように二階へ続く階段へ向かう赤羽さん。直感的にオレも二階にショウコさんが居る気がしていた。

「行けると思うか?」

 すると眼帯の男が立ち塞がる。デスヨネー。
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登場人物紹介

鳳健吾(おおとり けんご)。

社会人。26歳。リンカの隣の部屋に住む青年。

海外転勤から3年ぶりに日本に帰って来た。

所属は3課。

鮫島凜香(さめじま りんか)。

高校1年生。15歳。ケンゴにだけ口が悪い。

鮫島瀬奈(さめじま せな)

XX歳(詮索はタブー)。リンカの母親。ママさんチームの一人。

あらあらうふふなシングルマザーで巨乳。母性Max。酒好き。

谷高光(やたか ひかり)

高校1年生。15歳。リンカの幼馴染で小中高と同じ学校。雑誌モデルをやっている。

鬼灯未来(ほおずき みらい)

18歳。リンカの高校の先輩。三年生。

表情や声色の変わらない機械系女子。学校一の秀才であり授業を免除されるほどの才女。詩織の妹。

鬼灯詩織(ほおずき しおり)

30代。ケンゴの直接の先輩。

美人で、優しくて、巨乳。そして、あらゆる事を卒なくこなすスーパー才女。課のエース。

所属は3課。

七海恵(ななみ けい)

30代。1課課長。

ケンゴ達とは違う課の課長。男勝りで一人称は“俺”。蹴りでコンクリートを砕く実力者。

黒船正十郎(くろふね せいじゅうろう)。

30代。ケンゴの勤務する会社の社長。

ふっはっは! が口癖で剛健な性格。声がデカイ。

轟甘奈(とどろき かんな)。

30代。社長秘書。

よく黒船に振り回されているが、締める時はきっちり締める。

ダイヤ・フォスター

25歳。ケンゴの海外赴任先の同僚。

手違いから住むところが無かったケンゴと3年間同棲した。四姉妹の長女。

流雲昌子(りゅううん しょうこ)。

21歳。雑誌の看板モデルをやっており、ストーカーの一件でケンゴと同棲する事になる。

淡々とした性格で、しっかりしているが無知な所がある。

サマー・ラインホルト

12歳。ハッカー組織『ハロウィンズ』の日本支部リーダー。わしっ娘

ビクトリア・ウッズ

30代。ハロウィンズのメンバーの一人で、サマーの護衛。

凄腕のカポエイリスタであり、レズ寄りのバイ。

白鷺綾(しらさぎ あや)

19歳。海外の貴族『白鷺家』の侯爵令嬢。ケンゴの許嫁。

音無歌恋(おとなし かれん)

34歳。ママさんチームの一人で、ダイキの母親。

シングルマザーでケンゴにとっては姉貴みたいな存在。

谷高影(やたか えい)

40代。ママさんチームの一人であり、ヒカリの母親。

自称『超芸術家』。アグレッシブ女子。人間音響兵器。

ケンゴがリンカに見せた神ノ木の里

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