第315話 ケツを四つにしてやるのです!

文字数 2,321文字

「と、言うのが事の顛末ですぞ。陸殿」

 ヨシ君は焼き肉の誘いを断り、報告を優先して帰社していた。
 そして、4課へ戻ると、陸、海、空、三鷹、真鍋、国尾にショウコ奪還を大まかに説明する。
 女郎花教理による拉致。タンカー船に乗り込み、何とか連れ戻す事に成功。
 ハロウィンズの事はなるべく偶然だと言い、状況を上手く利用したと言う形にした。

「そんな大物が裏で絡んで居たとはね」
「ヨシ君! なんで私たちを呼んでくれなかったんですか!」
「ロリコンを拗らせた変態ヤローは同じことを繰り返すのですよ!」
「うーん。なら、名倉課長に襲撃があった件って……」
「陸殿の想定通り、女郎花教理の手の者に違いありませぬ。名倉課長は?」
「無事だ」

 真鍋は黒船より、襲撃者であるマークの件を一任されていた。当人は黙秘を貫いているとの事。

「陸。お前と海と空は私とマーク・レイヤーの件に就け」
「はい」
「木刀を磨いておきますよ!」
「ロリコン野郎が現れたらケツを四つにしてやるのです!」
「鷹さんはこの件を保留と言う形で待機してもらって良いですか?」
「アンタの判断に従うよ」
「国尾」
「なんだい! ボス!」

 一言も喋らずに腕を組んで壁に背を預けて眼を閉じていた国尾は、わっ! と起動する。

「お前は流雲女子の周囲を調べろ。狂愛じみたメールの件が気になる。本人に接触しても構わん」
「ほっほう! おまかせ!」
「ヨシ、お前は――」
「我輩はフリーで動きましょう。 状況に合わせて臨機応変に対応いたしますぞ」
「任せる」

 真鍋は手をテーブルに置いて皆に言う。

「私の推測だがストーカーの件はまだ終わっていない。女郎花教理に釘を刺しつつ、別の可能性にも備える」

 はい! と全員が返事をすると、各々の役割へ移った。





「ほう。これが甲板で大暴れしていたユニコ君か」

 『ハロウィンズ』のアジトに帰ってきたオレは、今回の作戦で使ったユニコ君達をトラックから降ろす手伝いをしていた。

「フルアーマーは問題なかった、な!」
「くふふ。操作ラグの微調整も今後の課題ですねぇ」
「これは空を飛ぶのか?」

 外から見えない裏側の中庭に座り込むフルアーマーユニコ君達。これがブルーインパルスみたいに編隊を組んで飛ぶのだから、世も末だな。

「テツ、レツ、整備を頼むぞ。データは抜き取っておいてくれ、後にわしが見る」
「了解、だ!」
「くふふ。お任せを」
「私も手伝おう」

 ショウコさんも手を貸す様子。と言うよりも、フルアーマーユニコ君に興味津々と言った形だ。

「じゃあオレも――」
「フェニックス、ちょっと良いか?」

 手伝うついでにフルアーマーユニコ君達の驚きギミックを拝見しようと思っていたが、サマーちゃんに呼び止められる。

「なに?」
「今回の拉致の件じゃ。お主はどう見る?」
「どうって……例のストーカーが女郎花教理だったんでしょ?」

 全てが片付いたとは言わないが、一通りは幕を引いたと思っている。
 女郎花が最後に、お詫びをする、と言ってきた所を見るに、ショウコさんに対する執着は消えたと見ても良いだろう。
 うん……いや、今考えてみても勿体なかったかなぁ……
 何せ、あの女郎花教理の“お詫び”だ。1億とか貰えたかも……

「うぐぐ……」
「何を頭を抱えておる。わしの推測では、ショウコに対するストーカーの件は終わっとらん」

 サマーちゃんは焼き肉を通してショウコさんの事をフルネームではなく、“ショウコ”と呼ぶ様な中になった。微笑ましい。

「今度は何をニヤニヤしておる。良いか、ショウコへの狂愛メールは女郎花教理の仕業ではない」
「え? そうなの?」

 アレだけの事を起こしておきながら、事の発端はヤツの仕業ではない?

「最初から連れていく事が目的であったのなら、警戒させる様な事をするのは辻褄が合わん。女郎花教理の性格や計画性を見るに、船に乗せるまでは騒ぎにしたくなかったハズじゃ」

 実際におぬしに見られて奪還されるキッカケになったしのぅ。
 と、サマーちゃんは一通りの考察を交えて狂愛メールがいかに女郎花にとって不都合な行動であったかを語る。

「それに狂愛メールの中身はいかにしてショウコを愛しているだの、自分しか幸せに出来ないだの、気持ち悪い内容のフルコース。女郎花教理のショウコに対する見方は狂信的じゃった。内容もヤツが書くにしては考え難いモノじゃ」
「て事は……女郎花の一件は全くの偶然?」
「おそらくのぅ」

 マジかよ……それなら相当にヤバかったんだなぁ。同棲が1日ズレてたらショウコさんは拉致されてたって事か。危ねー。

「そうだ。サマーちゃんの方でメールがどこから来たとかわからない?」
「出来ん事も無いが、今はユニコ君達が先じゃ。『Mk-VI』も整備を済ませてマザーの元へデータを送らねばならん」
「なんかごめんね。色々と出してくれた手前、こっちは恩を返すのは手伝いくらいしか出来ないよ」
「『Mk-VI』の試験を手伝ってくれればそれで良い。おぬしはもう『ハロウィンズ』じゃしな」

 オレも認定されちまったワケか……嫌では無いが、静かに暮らしたいなぁ。

「ユニコ君の件が終わったらショウコのストーカーを一気に洗おう。家族構成、身長、体重、座高、視力、聴力、血液型、どこへ行き、何を食べ、何時に起きて、何時に寝て、パンツはどっちの足から履くのか。その全てをおぬしに提示する。明日には変態ストーカー野郎は二度と表を歩けなくなるじゃろうな」

 うわぁ、凄い。こっちがストーカーみたい……個人情報保護なんて、全然無視だぁ!
 実際にソレが出来るのだから、サマーちゃんだけは絶対に敵に回したくないな。

「フェニックスよ。努々(ゆめゆめ)油断するでないぞ。ショウコとは四六時中一緒に居るが良い」
「わかった」
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登場人物紹介

鳳健吾(おおとり けんご)。

社会人。26歳。リンカの隣の部屋に住む青年。

海外転勤から3年ぶりに日本に帰って来た。

所属は3課。

鮫島凜香(さめじま りんか)。

高校1年生。15歳。ケンゴにだけ口が悪い。

鮫島瀬奈(さめじま せな)

XX歳(詮索はタブー)。リンカの母親。ママさんチームの一人。

あらあらうふふなシングルマザーで巨乳。母性Max。酒好き。

谷高光(やたか ひかり)

高校1年生。15歳。リンカの幼馴染で小中高と同じ学校。雑誌モデルをやっている。

鬼灯未来(ほおずき みらい)

18歳。リンカの高校の先輩。三年生。

表情や声色の変わらない機械系女子。学校一の秀才であり授業を免除されるほどの才女。詩織の妹。

鬼灯詩織(ほおずき しおり)

30代。ケンゴの直接の先輩。

美人で、優しくて、巨乳。そして、あらゆる事を卒なくこなすスーパー才女。課のエース。

所属は3課。

七海恵(ななみ けい)

30代。1課課長。

ケンゴ達とは違う課の課長。男勝りで一人称は“俺”。蹴りでコンクリートを砕く実力者。

黒船正十郎(くろふね せいじゅうろう)。

30代。ケンゴの勤務する会社の社長。

ふっはっは! が口癖で剛健な性格。声がデカイ。

轟甘奈(とどろき かんな)。

30代。社長秘書。

よく黒船に振り回されているが、締める時はきっちり締める。

ダイヤ・フォスター

25歳。ケンゴの海外赴任先の同僚。

手違いから住むところが無かったケンゴと3年間同棲した。四姉妹の長女。

流雲昌子(りゅううん しょうこ)。

21歳。雑誌の看板モデルをやっており、ストーカーの一件でケンゴと同棲する事になる。

淡々とした性格で、しっかりしているが無知な所がある。

サマー・ラインホルト

12歳。ハッカー組織『ハロウィンズ』の日本支部リーダー。わしっ娘

ビクトリア・ウッズ

30代。ハロウィンズのメンバーの一人で、サマーの護衛。

凄腕のカポエイリスタであり、レズ寄りのバイ。

白鷺綾(しらさぎ あや)

19歳。海外の貴族『白鷺家』の侯爵令嬢。ケンゴの許嫁。

音無歌恋(おとなし かれん)

34歳。ママさんチームの一人で、ダイキの母親。

シングルマザーでケンゴにとっては姉貴みたいな存在。

谷高影(やたか えい)

40代。ママさんチームの一人であり、ヒカリの母親。

自称『超芸術家』。アグレッシブ女子。人間音響兵器。

ケンゴがリンカに見せた神ノ木の里

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