第429話 密かに燃える

文字数 2,251文字

 土曜日は夜通しPS5の性能をグラフィックに、おーおー、言いながらPSVRで、某ゾンビゲーム8を一人称視点で、わー! ぎゃー! 言いながらリンカと交代でプレイした。館のベイビー怖すぎひん? ずるずると肉を引きずる音までリアルに聞こえて来る臨場感はマジでヤバい。本当に背後から迫る感じと泣き言にリンカは何度も飛び跳ねてた。

 その日は館をクリアした所で神経を削られたので就寝。続きは後日にすることに。朝起きるとシレッとリンカがオレの布団に入って来ていた。
 ベイビーとのファーストVRはリンカだったのでガチでビビったのだろう。

 日曜日は、リンカはセナさんと出かけて行った。何でも色々と“サイズの合うモノ”を買いに行くとか。オレは自然とセナさんの巨峰に眼が行ったのを察されたリンカにローキックを貰った。久しぶりの流れはオレが膝から崩れるまでがセットだ。

 オレはPS5で格闘ゲームを買った。リンカも心得のあるナンバリングの最新版だ。中々にハマれそうで、良い買い物をしたぜ。
 次の日が平日の夜はリンカも遊びには来ない。しかし、美麗グラフィックにハマってゲームをやり込んでいたオレに夕飯のお裾分けを持ってきたリンカに、あんまり夜更かしすんなよ、と軽く注意された。自制心を持たねば。





「おはようございます」
「おはよう。鳳君」

 週の始まりである月曜日。そんな日でも休日が恋しく感じないのは鬼灯先輩の挨拶と笑顔を見れるからだ。
 3課の他の方々にも挨拶をして始業時間までに余裕で席に着く。

“全員早ぇな! もっと時間ギリギリまで寝ててもいいぞ! ガハハ!”

 と言う3課の初動をかける獅子堂課長の声が無い事だけは寂しさを感じる。
 3課は獅子堂課長はとって家族みたいなものだ。派遣先で酷い扱いを受けた時、獅子堂課長はそれを機敏に察する。良く社員の様子を見ているのだろう。
 そして事情を聞き、深刻であればその会社へ自ら乗り込んで黙らせるのだ。相手側からすれば、ガハハな2メートルの老マッスラーがやってくるのは巨人を相手にしている様なモノだろう。
 本当にゲンじぃは頼りになるんだ。3課でもゲンじぃの代わりに席に就こうなんて考える人はいない。

 オレにとってはもう一人のジイさんって感じだが、鬼灯先輩くらいの世代は父親のように感じている人も多いだろう。

「ふふ。鳳君、獅子堂課長が居なくて寂しい?」

 空いている課長席を見ていたオレの様子を察した鬼灯先輩が隣の席に座りながら訪ねて来る。

「いつものガハハが聞けないと、なんか調子が出ないんですよね」
「そうね。だからこそ、獅子堂課長が居ない間でもきちんと仕事をして戻ってきた時にいつも通りで迎えましょう」
「はい!」

 いやぁ、ホントに6年前にゲンじぃの話を受けて良かったよぉ。
 世の中には美人の先輩なんてごまんと居るパターンだけど、恐らくその中では鬼灯先輩はバグレベルの女性だ。

 性格ヨシ! スタイルヨシ! 仕事ヨシ!

 何度も思うけどまさに完璧超人。近くに居るだけで精神的にバフを受ける人である。
 開発運営が気づいたら即日ナーフされるレベルのチートキャラ。しかし残念。これは現実なので運営もナーフもクソもない。これからも鬼灯先輩と仕事が出来るだけで仕事のストレスは6割カットだぜ!

「注意事項は特にない。各々、仕事の一つ一つを大切にね」

 課長代理として、後光の射す仏の徳さんのありがたみを感じる朝礼で業務開始。





「衣装の件ってオッケーだったの?」
「うん……まぁね……」

 登校してHRが始まる前に、あたしはヒカリに文化祭で使うコスプレ衣装の件は問題なく話が着いた事を伝えた。

「それとヒカリ。あのカタログ雑誌だけどさ。店主のお婆さんが刷り直すからって回収されちゃった」
「あ、そうなんだ。別にいいよ。サイトでも衣装は確認できるし」

 特に気にしないヒカリの様子にあたしは内心、ほっとする。

「今日から文化祭の準備期間に入るし、出だしから良い感じね」
「うん」

 ヒカリは話題の中心に成りやすい事からもリーダーシップを良い感じに発揮する。
 よく勘違いされるが、それは親友の見た目からだけではない。ヒカリの両親の切実さを側で見てきたからこその素質なのだ。
 誰にでも社交的なヒカリの性格をたまに羨ましく感じたりもする。

「引き続きリンにはスイレンさんとの連絡をお願いしたいけど……」
「いいよ」
「ありがとー」
「よーし、全員席につけー」

 箕輪先生がチャイムと共に教室に入って来て、ガヤついていたクラスメイトは各々の席に戻る。

「HRを始めるぞー! そのまま文化祭の準備に入るからなー」

 箕輪先生が簡単な連絡事項を告げ、そのまま1限目に入る。

「今週は明後日が祝日だが、必要があれば学校に来て準備をしても良い。作業の申請は前日までにしておくこと」

 例年と比べて少しイレギュラーな準備期間であるが、今年が初めての1学年にはあまり関係は無いだろう。

「じゃあ、ゲストを決めるぞ。今年は一クラス、チケットは三つまでになってる。誰か着て欲しい身内とか親戚はいるか?」

 うちの文化祭は休みを挟んで四日間ある。
 一日目は生徒だけで行い、二日目、三日目だけは一般的公開となるが、それはクラスで発行するチケットを持つ者しか入場を許可されない。ちなみに四日目は片付けと在庫消化である。

「まぁ、あんまり身元が知れない身内はパスしてくれ。折角の文化祭だ。余計なゴタゴタを外部から持ち込むのもナシな」

 ここであたしは、彼を呼ぶ為にあのチケットを手に入れなくては!
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登場人物紹介

鳳健吾(おおとり けんご)。

社会人。26歳。リンカの隣の部屋に住む青年。

海外転勤から3年ぶりに日本に帰って来た。

所属は3課。

鮫島凜香(さめじま りんか)。

高校1年生。15歳。ケンゴにだけ口が悪い。

鮫島瀬奈(さめじま せな)

XX歳(詮索はタブー)。リンカの母親。ママさんチームの一人。

あらあらうふふなシングルマザーで巨乳。母性Max。酒好き。

谷高光(やたか ひかり)

高校1年生。15歳。リンカの幼馴染で小中高と同じ学校。雑誌モデルをやっている。

鬼灯未来(ほおずき みらい)

18歳。リンカの高校の先輩。三年生。

表情や声色の変わらない機械系女子。学校一の秀才であり授業を免除されるほどの才女。詩織の妹。

鬼灯詩織(ほおずき しおり)

30代。ケンゴの直接の先輩。

美人で、優しくて、巨乳。そして、あらゆる事を卒なくこなすスーパー才女。課のエース。

所属は3課。

七海恵(ななみ けい)

30代。1課課長。

ケンゴ達とは違う課の課長。男勝りで一人称は“俺”。蹴りでコンクリートを砕く実力者。

黒船正十郎(くろふね せいじゅうろう)。

30代。ケンゴの勤務する会社の社長。

ふっはっは! が口癖で剛健な性格。声がデカイ。

轟甘奈(とどろき かんな)。

30代。社長秘書。

よく黒船に振り回されているが、締める時はきっちり締める。

ダイヤ・フォスター

25歳。ケンゴの海外赴任先の同僚。

手違いから住むところが無かったケンゴと3年間同棲した。四姉妹の長女。

流雲昌子(りゅううん しょうこ)。

21歳。雑誌の看板モデルをやっており、ストーカーの一件でケンゴと同棲する事になる。

淡々とした性格で、しっかりしているが無知な所がある。

サマー・ラインホルト

12歳。ハッカー組織『ハロウィンズ』の日本支部リーダー。わしっ娘

ビクトリア・ウッズ

30代。ハロウィンズのメンバーの一人で、サマーの護衛。

凄腕のカポエイリスタであり、レズ寄りのバイ。

白鷺綾(しらさぎ あや)

19歳。海外の貴族『白鷺家』の侯爵令嬢。ケンゴの許嫁。

音無歌恋(おとなし かれん)

34歳。ママさんチームの一人で、ダイキの母親。

シングルマザーでケンゴにとっては姉貴みたいな存在。

谷高影(やたか えい)

40代。ママさんチームの一人であり、ヒカリの母親。

自称『超芸術家』。アグレッシブ女子。人間音響兵器。

ケンゴがリンカに見せた神ノ木の里

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