第420話 人じゃない。神様だよ

文字数 2,196文字

「テツ。その質問に完璧に答えられる者は人じゃない。神様だよ」
『ぬ……そうなのか?』
「ああ」

 女子高生。それは男からすれば最も理解の及ばない神に近い存在。
 触れるだけで法に罰せられ、叫ばれようモノなら即御用。触らず、視線を向けず、関わらず、特に関係者でもなければ見かけたらスルー安定の神話生物である。(成人以上の男限定的)

『しかし……鳳殿は鮫島女子が居るではないか。上手く付き合っているのではないか?』
「テツよ。思春期の女の子は98%が未知なんだ」
『98%……海よりも理解の進んでいない存在であると!?』
「Yes。オレもかなりの手探りと綱渡りを繰り返して何とか手錠はかけられずにいるってだけだ。リンカちゃんが本気で訴えればオレはどこに居ても檻の中にぶちこまれる運命なのさ」
『なんと……女子高生とはそんなにも恐ろしい存在であるのか!』
「早めに教えられて良かったよ」

 テツが真面目に相談してきたと言うことは、女子高生関係で何か起こったと言う事だ。しかも、知人の中でオレに相談してきた所を見るに緊急性のあるモノなのだろう。

『……それは困ったな』
「オレの経験で良ければ助言が出来るかもしれない。話くらいなら聞くぞ?」
『うむ……では少々簡略的に――』

 テツが言うには事が起こったのが本日発売の『魔法少女マジカルリリリ』の限定フィギアを買いに行った時の事らしい。





 早朝に幕張の販売ブースに並び、転売ヤー対策の合言葉に問題なく答え、熱弁を中断される形で整理券を貰い、販売時間を待っていると列の後方で騒がしい声が聞こえた。
 なんでも、並んでいる女子高生に雰囲気の悪いナンパ男達が絡んでいた。
 そこで、テツが動く。この手の界隈では“プロフェッサー”とも呼ばれるテツは、なんやかんやでナンパどもを撃退。オタク達にスマ○ラの観客の様な声援を送られ、その称賛を全身に浴びていると女子高生から名前を聞かれた。
 そして、テツとだけ名乗り、クールに列に戻ろうとすると、

“フィギアを買いましたらお話できませんか?”

 って誘われたらしいけど『Mk-VII』の調整があるから、適当に言いワケしてフィギアを買ったら帰ると言ったら、LINE交換をしたらしい。なんじゃそら。

「色々とツッコミたい所はあるけどさ、よくナンパに関わって行ったよな。そう言うのってそっちの界隈だとスルー安定じゃないの?」
『なにを言う、か! 『マジカルリリリ』を愛する者、が! 困っていたの、だ! 無視をする事の方が罪、だ!』

 当時のテンションを思い出してか、口調が戻ったな。
 中々の吊り橋効果だ。その子からすれば完全にテツはヒーローに見えただろう。

『しか、し。いささか、話が上手すぎ、る! 何かしらのトラブルの気、配! があって、な!』

 テツは例の女子高生は自分には不釣り合いだと思っている様子だ。オレはそう言う偏見は無いのだが、確かに一回助けてもらっただけで、そこまで親密に寄ってくるのは少し変な気もする。

「テツ、この件は女子高生の扱いうんぬんよりも、サマーちゃんに相談した方がいいよ」
『むぅ、そう、か』
「裏で何が潜んでいるのか不明だし、その子のプライバシーを尊重するなら一度ちゃんと時間を作って会ってみて、真意を確かめた方がいい。ヨシ君にも協力を頼んでさ」
『そうだ、な。ヨシ殿ならば安心、だ!』

 テツと盟友でもある弁護士のヨシ君ならば、それなりの事情を察した上でフォローに回ってくれるだろう。

『むぅ!? LINE、だ!』
「なんて来てる?」
『明日会いませんか? だ! どうするべきか……』
「ダメだ。オレらじゃ答えを出すには時間も脳ミソも足りない。リーダーに頼ろう」

 テツとそんな話をしていると、サマーちゃんが二階から降りてきた。

「レツ、テツ、『Mk-VII』はどんな感じじゃ?」





「馬鹿者テツ! 何故そんな面白い事を黙っていたのじゃ!」
「ホントホント。テツ~、とんでもないイベントだよ、それ」
「くふふ。流石はテツ。細かい事情を根掘り葉掘り聞かねばなりませんねぇ」
「皆! 真面目に頼、む!」

“限定フィギアを買いに行ったらナンパで困ってる女子高生が居たので助けたらLINEを交換した話”

 みたいな、昨今の長げぇラノベタイトルの様な説明を聞いたハロウィンズのメンバーは各々が楽しそうに目を光らせた。
 最近はユニコ君を使った武力介入が多かったけれど……『ハロウィンズ』って本来はこう言う事に目を光らせる人間の集まりだったね。

「では、少し皆に意見を貰おうかのぅ。ショウコ、お主はどう見る?」

 サマーちゃんは客観的な視点を求めてショウコさんに問う。

「私ならお礼は言うがLINEを交換する程ではない。前からテツを知っていたなら話は別だが……そうだとすれば間違いなく罠だ」

 ズバッと言い切るなぁ。流石はショウコさんだ。淡々とした口調も相まって真実に聞こえるぜ!

「わしの考えと同じじゃな」
「罠かぁ。どうする? 後ろに居るヤツを炙り出す?」
「くふふ。まずは商店街に誘い込みますかねぇ」
「やは、り。そう言うこと、か……」

 おっと、ヤバイぞ。勝手に女子高生が悪い子に認定されている。確かにその可能性は高いけれど、ゼロではない可能性も考察して欲しい。

「ユニコ(ちょっと)――」
「フェイスパーツを取れ、フェニックス」
「ちょっと良いかな」

 フェイスパーツを取ったオレの言葉に全員が注目する。
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登場人物紹介

鳳健吾(おおとり けんご)。

社会人。26歳。リンカの隣の部屋に住む青年。

海外転勤から3年ぶりに日本に帰って来た。

所属は3課。

鮫島凜香(さめじま りんか)。

高校1年生。15歳。ケンゴにだけ口が悪い。

鮫島瀬奈(さめじま せな)

XX歳(詮索はタブー)。リンカの母親。ママさんチームの一人。

あらあらうふふなシングルマザーで巨乳。母性Max。酒好き。

谷高光(やたか ひかり)

高校1年生。15歳。リンカの幼馴染で小中高と同じ学校。雑誌モデルをやっている。

鬼灯未来(ほおずき みらい)

18歳。リンカの高校の先輩。三年生。

表情や声色の変わらない機械系女子。学校一の秀才であり授業を免除されるほどの才女。詩織の妹。

鬼灯詩織(ほおずき しおり)

30代。ケンゴの直接の先輩。

美人で、優しくて、巨乳。そして、あらゆる事を卒なくこなすスーパー才女。課のエース。

所属は3課。

七海恵(ななみ けい)

30代。1課課長。

ケンゴ達とは違う課の課長。男勝りで一人称は“俺”。蹴りでコンクリートを砕く実力者。

黒船正十郎(くろふね せいじゅうろう)。

30代。ケンゴの勤務する会社の社長。

ふっはっは! が口癖で剛健な性格。声がデカイ。

轟甘奈(とどろき かんな)。

30代。社長秘書。

よく黒船に振り回されているが、締める時はきっちり締める。

ダイヤ・フォスター

25歳。ケンゴの海外赴任先の同僚。

手違いから住むところが無かったケンゴと3年間同棲した。四姉妹の長女。

流雲昌子(りゅううん しょうこ)。

21歳。雑誌の看板モデルをやっており、ストーカーの一件でケンゴと同棲する事になる。

淡々とした性格で、しっかりしているが無知な所がある。

サマー・ラインホルト

12歳。ハッカー組織『ハロウィンズ』の日本支部リーダー。わしっ娘

ビクトリア・ウッズ

30代。ハロウィンズのメンバーの一人で、サマーの護衛。

凄腕のカポエイリスタであり、レズ寄りのバイ。

白鷺綾(しらさぎ あや)

19歳。海外の貴族『白鷺家』の侯爵令嬢。ケンゴの許嫁。

音無歌恋(おとなし かれん)

34歳。ママさんチームの一人で、ダイキの母親。

シングルマザーでケンゴにとっては姉貴みたいな存在。

谷高影(やたか えい)

40代。ママさんチームの一人であり、ヒカリの母親。

自称『超芸術家』。アグレッシブ女子。人間音響兵器。

ケンゴがリンカに見せた神ノ木の里

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