第476話 異性を愛する為に必要なプロセス

文字数 2,073文字

 ゴキ○リパイセンを倉庫にあった軍手を着けて捕まえると、そのまま換気用の窓から外へポイ。
 換気窓は腕が通るくらいの狭さしかないので人が抜けるのは不可能。パイセンがI'll be backしない様にしっかりと戸締まりをする。

「さて。アヤさん、もう大丈夫――」
「……申し訳ありません」

 と、本日二度目の本気土下座をしてくるアヤさん。

「……二度も……この様な醜態をさらすなど……どうか……この不躾なアヤめを罵ってください……」

 真面目すぎて逆に面白くなってきたオレがいる。しかし、ここで笑うのは真面目に謝っているアヤさんに失礼なので何とか笑いを堪えた。

「アヤさんって、ゴキ――Gは苦手?」
「……本来であれば……何も問題なく排除できます。しかし……今のは……無防備ゆえに……精進が足りませんでした」

 と、土下座のまま言うアヤさん。
 まぁ……無防備に寝ている横に突然Gパイセンが、よっす、って現れたらオレでも初期リアクションはアレになる。
 しかも、これから合体しようとした矢先にだ。意識は完全に目の前の合体先に集中している所の、よっす、である。

「誰だってああなるからさ。気にしなくていいよ」
「……この愚かな私めにその様な優しい言葉は必要ありません」

 顔を上げずに涙声でそう言うアヤさん。めちゃくちゃ自分を責めてるなぁ。
 正直、今までにないタイプである。誰だって謝る時は自分に非がある部分を一部隠そうとするんだよね。

 そこが更なる傷口になるか、許すキッカケになるかは当人達の信頼関係次第。しかし、アヤさんは完全に自分が悪いと確定した物事だと理解すると、その様な小狡(こずる)い事は全く考えないらしい。
 “純粋”にも程があるよ。そんなアヤさんを見て、どう接すれば良いのかオレの中で粗方決まった。

「アヤさん、顔を上げて」
「……はい」

 ゆっくり土下座フォームからアヤさんは顔を上げると綺麗な姿勢で正座へ。

「明日デートしようか」
「え?」

 驚いた眼を向けてくる。今の反応は完全に予想外と言った素顔だ。

「やっぱりさ。段飛ばしに関係を進めるのは良くないと思うんだ」
「……仰っている事は解ります。しかし……」

 アヤさんは二度の失態(オレからすれば試練)を挽回しようと必死だ。

「だって、好きな食べものとか、嫌いなモノとか、お互いに何も知らないでしょ?」

 本来なら何かしらのキッカケから始まって、少しずつ相手の事を知って行って、結果として夜を一緒に過ごす。
 テンプレな恋愛ルートだが、それは目の前の異性を本当に“好き”なのかどうかを確かめる為に必要な期間なのだ。

 ソレを飛ばして、S○X! はい、結婚~。なんて、どこのエロ漫画だよって話。

 人生はゲームでも漫画でもない。

 心から目の前の異性と一緒に居たいかどうかは、本当に当人達にしか解らない。だから、その手順を飛ばすと将来必ずどこかで狂いが出てくる。
 オレはアヤさんにはそんな思いをして欲しくない。

「この際だから、ビシっと言うよ」

 オレはアヤさんの前に胡座をかいて座ると目線を合わせる。

「普通は出会って数時間の異性と混浴なんてやらないの」
「う……それは……そうですが……」

 ババァの背中押しとかで変な行動になったのは理解している様子。しかし、それを差し置いても少し暴走気味な気もする。

「君はそう言うのがちゃんと解るハズだ。それにここは『神ノ木の里』だよ。君が鎧の紐を締める様な所じゃないし、ゆっくり考えてから言葉を繋げても良いんだ」
「――はい」

 少し呆けた、はい、だったけど理解した声色の返事だったのでオレは優しく微笑む。

「だから、先にデートしよう。田舎だけど、それなりのスポットは知ってるからさ。退屈はしないと約束する」
「……わかりました」

 最後は少し恥ずかしそうに答えてくれた。その様子からS○X未遂の罪悪感はだいぶ薄れた様である。
 冷静に考えるとS○X未遂ってスゲーパワーワードだよなぁ。

「よし、じゃあ……寝ようかぁ」

 興奮による連続の緩急は、気を緩めたら一気に眠気がやってきた。性欲なんか全部停止し、脳は何よりも睡眠欲を欲してくる。
 今のオレの脳内メーカーは全て「眠」で埋めつくされているだろう。
 壁に寄りかかり、PS装甲が落ちたガ○ダムの様に色を失う。

「毛布はアヤさんが使っていいよ。オレは無くても眠れそうだから……」
「……あの……ケンゴ様」
「なに?」

 もはや、本日使える文字数は20字を切った。オレは意識も虚ろ虚ろに対応する。

「や、やはり……体調を崩されると明日の……その……デートに支障が出ると……思います……毛布は……共に使いましょう」

 アヤさんが恥ずかしにそう提案してくる。

「そうだね……そうしようか……」

 オレは眠れればなんでも良いやの精神で一杯だ。アヤさんが側に寄ってきて一緒の毛布にくるまっても、あったけぇ……程度にしか感じない。

「……おやすみ。アヤさん……」
「おやすみなさいませ。ケンゴ様」

 残り使用可文字数2字での暗転。心地よい暖かさに、アヤさんの良い匂いも相まって、良い夢が見れ……そう……だ……
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登場人物紹介

鳳健吾(おおとり けんご)。

社会人。26歳。リンカの隣の部屋に住む青年。

海外転勤から3年ぶりに日本に帰って来た。

所属は3課。

鮫島凜香(さめじま りんか)。

高校1年生。15歳。ケンゴにだけ口が悪い。

鮫島瀬奈(さめじま せな)

XX歳(詮索はタブー)。リンカの母親。ママさんチームの一人。

あらあらうふふなシングルマザーで巨乳。母性Max。酒好き。

谷高光(やたか ひかり)

高校1年生。15歳。リンカの幼馴染で小中高と同じ学校。雑誌モデルをやっている。

鬼灯未来(ほおずき みらい)

18歳。リンカの高校の先輩。三年生。

表情や声色の変わらない機械系女子。学校一の秀才であり授業を免除されるほどの才女。詩織の妹。

鬼灯詩織(ほおずき しおり)

30代。ケンゴの直接の先輩。

美人で、優しくて、巨乳。そして、あらゆる事を卒なくこなすスーパー才女。課のエース。

所属は3課。

七海恵(ななみ けい)

30代。1課課長。

ケンゴ達とは違う課の課長。男勝りで一人称は“俺”。蹴りでコンクリートを砕く実力者。

黒船正十郎(くろふね せいじゅうろう)。

30代。ケンゴの勤務する会社の社長。

ふっはっは! が口癖で剛健な性格。声がデカイ。

轟甘奈(とどろき かんな)。

30代。社長秘書。

よく黒船に振り回されているが、締める時はきっちり締める。

ダイヤ・フォスター

25歳。ケンゴの海外赴任先の同僚。

手違いから住むところが無かったケンゴと3年間同棲した。四姉妹の長女。

流雲昌子(りゅううん しょうこ)。

21歳。雑誌の看板モデルをやっており、ストーカーの一件でケンゴと同棲する事になる。

淡々とした性格で、しっかりしているが無知な所がある。

サマー・ラインホルト

12歳。ハッカー組織『ハロウィンズ』の日本支部リーダー。わしっ娘

ビクトリア・ウッズ

30代。ハロウィンズのメンバーの一人で、サマーの護衛。

凄腕のカポエイリスタであり、レズ寄りのバイ。

白鷺綾(しらさぎ あや)

19歳。海外の貴族『白鷺家』の侯爵令嬢。ケンゴの許嫁。

音無歌恋(おとなし かれん)

34歳。ママさんチームの一人で、ダイキの母親。

シングルマザーでケンゴにとっては姉貴みたいな存在。

谷高影(やたか えい)

40代。ママさんチームの一人であり、ヒカリの母親。

自称『超芸術家』。アグレッシブ女子。人間音響兵器。

ケンゴがリンカに見せた神ノ木の里

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