150 「残酷帳シリーズ」全8巻って、じつはミステリーなんだよ。 2

文字数 1,273文字


 ミステリーの定義。
<ミステリーという言葉は、謎や不可解な出来事や物事を指す言葉です。何か答えのない、説明のつかない謎めいた事象を指すことが多いです。>

 これから、ぼくなりの推理を展開するね。
 大げさかな(笑)。




 謎、その1 
 どうしてこんなことをしたのか?

 貸本漫画の業界は、1960年・昭和35年には衰退が始まっていた。
 そんな中で、このシリーズの売れ行きがよかったか、予告をしてしまっていたかで出版しないといけない状況だった。
 しかし、つげ義春が描けなかったんだと思うんだ。
 出版社としても、生き延びたいからこんな暴挙にでたんだろうな。


 謎、その2 
 つげ義春に原稿料は支払われたか?

 結論からいうと、支払われてはいない。
 断定はできないけれど、そう思うんだ。
 当時、漫画原稿は買い取りで、「売ってしまえばそれまでよ」または「買ってしまえばこっちのもの」の時代だったんだよね。
 漫画原稿を切り刻んで、コマを読者にプレゼントしていたぐらいだから、出版社にも作者にも、著作権なんていう概念もなかったみたいなんだ。


 謎、その3
 つげ義春は、どう対応したのか?

 子どものころから、対人恐怖症があって家族に対しても居心地の悪さを感じていたつげ義春が、誰にも会わないでも出来る仕事として漫画家になったというぐらいだから、抗議はしていないだろうな。
 極端にコミュニケーションが苦手みたいだしね。
 逆に、描けなかったことに「ぼくは、ダメなヤツだ」と罪悪感を抱いていたかもしれない。


 謎、その4
 読者にはバレなかったのか?

 ぼくの経験で言うと、バレなかったと思う。
 それは、小さな貸本屋に「残酷帳シリーズ」全8巻が揃うことは奇跡的なことなんだ。
 ぼくが「忍者武芸帖・影丸伝」を読んだのは、1巻からではなくて、借りれる本から読んだよ。




 全巻を借りて、最初から最後まで読みたいと願っていたんだ。
 1966年に小学館から新書版が出て、初めて全巻を通読出来たんだよ。




 謎、その5
 どうし出版の近い「6巻」を「8巻」に転用したのか?

 普通は、「1巻」とか「2巻」とかの古い作品を転用したほうがバレにくいと思うだよね。
 でも、完全な原稿がなかったんだよ、きっと。
  読者にプレゼントした原稿以外は、処分されたんだろうな。

 きっと、タイトルを「奴隷侍」って決めていたんだ。
 だから、残酷帳シリーズ 6  「忍者絶命」を「奴隷侍」に改名したと思う。
 

 謎、その6
 つげ義春はどうして「忍者絶命」を「奴隷侍」に改題したのか?




 これが、最大のミステリーだな。
 作品の内容が、タイトルに合っているからかもしれないけれど、深読みをすると、ここにつげ義春の意図を読み取ることが出来る。
「忍者絶命」は死んでしまうけれども、「奴隷侍」は、どんな状況でも生き延びていく感じがするだろ。
 まぁ、この後に東京トップ社から、どのぐらい本を出したかを調べると、ある程度は分かると思うんだけれど、それはこれからぼちぼちとやってみるよ。
 ぼくとしては、一冊も出していないほうがカッコいいと思うんだ。

 
ワンクリックで応援できます。
(ログインが必要です)

登場人物紹介

登場人物はありません

ビューワー設定

文字サイズ
  • 特大
背景色
  • 生成り
  • 水色
フォント
  • 明朝
  • ゴシック
組み方向
  • 横組み
  • 縦組み