01 鵜飼雅則   私と『山田甲八・漫画コレクション』

文字数 1,842文字

私と『山田甲八・漫画コレクション』 鵜飼雅則
                     2023年10月25日(水)

 私は『街』とか『影』とかの『貸本マンガ』を読んだことがなくて、唯一、記憶にあるのは、別府の温泉街にある貸本屋で、親戚のお姉ちゃんが借りてくれた『墓場の鬼太郎』くらいです。ものすごく怖かったのを覚えています。

 私のマンガ体験は基本的に『少年画報』、『少年』、『冒険王』、『ぼくら』などの月刊誌から始まっています。
『いがぐり君』、『ぼくとう君』、『よたろう君』、『ロボット三等兵』、『赤胴鈴之助』などが古いマンガとして記憶にあります。





 これらの雑誌は購入することもありましたが、母の婦人雑誌と一緒に毎月、借りていました。
貸本屋に行くのではなく、自宅に配達されていました。
 これも『貸本』といえるのかもしれませんけど。

 私と山田さんとの出会いは、2017年5月の大阪での展示会『炭鉱の記憶と関西 M炭鉱閉山20年展』での『特別展示 山田甲八・漫画コレクション 地方都市の貸本屋と漫画家』
にさかのぼります。
 この展示のことは、以前、研究会の『会報』に書いたことがあるので引用します。





 三宅秀典さんとの出会い 『特別展示 山田甲八・漫画コレクション』
 2017年の5月から6月にかけて大阪の二ヶ所の会場(エル・おおさか、関西大学博物館)で開催された『炭鉱の記憶と関西 M炭鉱閉山20年展』。





 担当した『炭都と文化 昭和30年代の地方都市』の展示の中で、私が特に力を入れて取り組んだのは、『特別展示 山田甲八・漫画コレクション 地方都市の貸本屋と漫画家』
と銘打った山田さんからお借りした沢山の貸本マンガの展示だった。





 山田さんのご自宅に初めてお邪魔し、特注の書庫に収められた3万冊以上に及ぶ膨大なマンガコレクションを見せていただいたときの驚きを私は忘れることができない。





 そのコレクションの多くが現在は入手困難な貸本マンガであった。
 山田さんからは、大阪での展示のために、丹念に調査し作成された『地方都市内の貸本屋分布図』、当時のO市の高校生たちが発行していたマンガ同人誌、萩尾望都のデビュー作が掲載された『なかよし』、O市出身の三人のマンガ家の作品が揃って掲載されている『週刊 少年チャンピオン』などの貴重なマンガ雑誌などと共に、50冊近くの貸本マンガとその原画のいくつかを送っていただいていた。

 これらをどのように分類して展示すればいいのか、私は思案していた。
 そんなとき貸本マンガ史研究会が編集した『貸本マンガRETURNS』(2006年、ポプラ社)という本があることを知り、さっそく読んだ。そしてこの本を参考にして、山田さんの本を、『少女マンガの世界~少女たちの夢のゆくえ』、『青春マンガの世界~青春って何だ!』、『探偵もの、アクションの世界~ミステリー、ハードボイルドの誘惑』、『ユーモアマンガの世界~爆笑の時代』、『時代劇マンガの世界~ヒーロー現わる!』、『怪奇マンガの世界~異世界への誘い』、『手塚治虫からの出発』、『ラジオ、テレビ番組をマンガに!』、『駄菓子屋で売られていたマンガ~赤本の世界』の九つに分類した。





 そして展示会の趣旨と展示案を貸本マンガ史研究会宛にメールでお送りし、アドバイスを求めた。どこに分類していいのかわからない本についても質問した。





 研究会の三宅秀典さんからは、本のカバーがハードかソフトか、本のサイズを明記することなど貸本マンガの展示にあたっての留意点を書いた丁寧なお手紙と共に地方都市出身のマンガ家、みやはら啓一の詳細なインタビュー記事が掲載された研究会の機関誌『貸本マンガ史研究』を送っていただいた。

 お手紙には三宅さんご自身もH県のご出身で、N鉄電車を利用されていたこと、炭鉱社宅の暮らしを描いたマンガとして永島慎二の『少女マリ』は逸することができないことなどが書かれていた。





 当時、三宅さんは『貸本マンガ史研究』に筑豊の炭鉱地帯出身の男が主人公の佐藤まさあきのアクションマンガ『黒い傷痕の男』を詳細に論じた論考を連載されていた。





 佐藤は土門拳の写真集『筑豊のこどもたち』に衝撃を受けたことがきっかけでこのマンガを描いていた。





三宅さんの論考には『T市史』などが引用され、権力と対峙して自滅する主人公の『復讐心』の背景となる筑豊の歴史と暮らしが丁寧に紹介されていた。
 三宅さんには貸本マンガ史研究会のサイトで炭鉱展をご紹介いただいた。


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