第02話 始まりは、一斉メール 2
文字数 2,051文字
◆2023・10・18(水)
すると、その日の夜、山田甲八さんからメールが届いたんだ。
それで、山田さんもグループメールに含まれていたことに気付いた。
いやあ、驚いた。
まさか、返信があるなんて思いもしなかった。
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漫画コレクターの山田です。
夜分遅くにすみません。
私も全く同じで、中学時代になって今まで通っていた貸本屋から『刑事』『ゴリラマガジン』『こだま』などの貸本誌や週間誌や月刊誌を譲ってもらってバラして自分だけのアンソロジー本を作っていました。
当時、永島慎二、矢代まさこ、さいとうたかを等の貸本作家や手塚治虫、川崎のぼる等の作品集を作っていまして、今でも棚に並べています。
●山田さんの手作り作品集。
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又、大友克洋を読んでメビウスやフラゼッタの画集を探したり、自分と同じ事をした人がいると判り嬉しかったです。
●メビウス
私は幼少の頃、年上のいとこから学年誌や画報や少年等をもらって読んでいました。その本はバラバラですのでストーリーの続きがどうなったかわからないままで大きくなりました。
中学の頃貸本屋の他に古本屋の存在を知り、そこにも昔の漫画本があると買ったりしていました。
その頃新書版の単行本があちこちの出版社から発行されるようになり、バイトなどをして買い求めるようになりました。
●当時、山田さんが買った漫画本の数々。
貸本の蔵書は中学の頃バラバラした本には、捨てた中に今では気になる、漫画史には欠かすことが出来ない作品作家があるぞ、という事に二十歳頃に気づき、地元の貸本屋巡りをしてどうにか500冊程買い求め、それからは全国の古本屋の目録を取り寄せて注文購入しています。
今では、私の蔵書が何かの役に立ってくれれば集めた甲斐があるという事で、色んな協力をしています。
長々と書き失礼しました。何かありましたらご連絡下さい。
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いやあ、驚いた。
まさか、ぼくと同じようにオリジナル作品集を作っていた人がいるなんて思いもしなかった。
山田甲八って、いったいどんな人物なのかな?
あの素敵な書庫を持っている人は……、いや、そこじゃないだろ!
自分にツッコミを入れた。
すぐに、メールを書き始める。
「アレクサ、いま何時?」
書き終わってから、アマゾンのスマートスピーカーに訊いた。
「午前1時20分です」
一瞬迷ったが、送信した。
知りたいと思うと、ぼくは突っ走ってしまうのだ。
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山田さん、浦山です。
メールありがとうございます。
鵜飼さんから、『山田甲八漫画コレクション』画像の数々を送っていただきました。
●貸本漫画 『影』コレクション。
『影』や『街』など貸本屋で流通した漫画本のほとんどがコレクションされているとあり、驚愕しています。
おおげさじゃないですよ。
鵜飼さんと出逢った時、同好の士を発見して喜んだのですが、こうして山田さんとも出逢うことができて、大喜びしています。
ぼくは、小学生のころから漫画家になることを夢みていたんです。
テレビで、『木下惠介アワー』(1964年10月~1974年9月)を見ていて、ぼくの作品もこんな風に毎週ドラマ化したい。などと妄想していました。
漫画家の谷口ジローさんがまだ売れていない時に、アシスタントになりました。
●谷口ジロー 無防備都市
そこで、谷口さんがフランスのコミック作家、ジャン・ジローの影響を受けていることを知り、『バンド・デシネ』の収集を始めました。
●ジャン・ジロー『ブルーベリー』シリーズ
漫画週刊アクションの新人賞に引っかかってデビューしましたが、漫画家生活は10年で終えて、定職につきました。
こうして、自分語りを書き始めると長くなりますね(笑)。
そうそう、いまは小説を書いています。
60歳の定年を待ち望んで、大阪文学学校へ通い10年が過ぎました。
漫画家生活と同じ10年ですが、若い頃の波乱万丈ではなくて、淡々とした日々を過ごしています。
これからも、メル友としてお付き合いをお願いします。
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◆2023・10・19(木)
こんにちは、山田です。
昨日は夜分遅くにすみませんでした。
私も小学生の頃から漫画家になりたいと思っていて、中学の時『COM』に触発され、同級生達と同人誌を創って描いていました。その中の一人は漫画家になりました。短かったけどチャンピオンで数作掲載されました。
浦山さんは谷口ジローのアシスタントをされていたとの事ですが、凄いですね。
谷口作品はデビュー頃から読んでいましたので浦山さんが書かれているシーンを見ていたという事ですね。
今年の春に、北九州マンガミュージアムで『谷口ジロー原画展』がありましたので、それを知っていたらまた違う見方があったでしょうね。
描くひと 谷口ジロー展
こちらこそメル友としてこれからも宜しくお願いします。
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おお、思いは通じたぞ。
知りたいことはいろいろあるけど、まずは書庫の大きさだな。
いやいや、それはぐっと我慢して、貸本漫画のことからだよな。