第20話 咲雪のいるところ。 7
文字数 1,691文字
*
ぼくがアパートに到着すると、前に停っているスポーツカーから長身の男が降りた。
横を通り過ぎてから、スーパーで咲雪さんと一緒にいた男だと気付いた。
ぼくがアパートの外階段を静かに上がると男も音を消して付いて来る。
咲雪さんの部屋のドアをノックしているときに、男が階段を上がりきった。
薄暗くて表情は分からない。
手に花束を持っていた。
ドアが開かないのでノブを回すと、鍵はかかっていなかった。
ぼくは男を見ながら部屋の中に入った。
咲雪さんは、窓から身を隠すようにして、壁にもたれていた。
階段を駈け下りる靴の音。自動車のドアを強く閉める音。
急発進したエンジンの排気音が聞こえなくなるまでぼくたちは黙っていた。
「どうして、あんな男を受け入れたのか、わけが分かんない」
つぶやくように言った。
「男って嫌われたことに気づかずにいられるものなの?」
黙り込んだまま、ぼくはテーブルに置いたドーナツの函を見つめていた。
「ひどい事になってるね」
咲雪さんが、ぼくの胸の模様に初めて気付いたように言った。
「大丈夫。ちょっと引っ掻かれただけだから」
「サイズが合うのがあればいいけど」咲雪さんはカーテンの中へ入って行った。
ぼくは勝手に冷蔵庫を開けた。ソーダーが買い足してある。ビールと一緒に取り出した。
「こんなのしかないわ」
咲雪さんはバンドエイドとタオル地のパーカーを探し出してくれた。
着替えたけど、小さくて腕を自由に動かせない。
ぼくは案山子のように両手を広げて一回転する。
咲雪さんが口を押さえて笑いをこらえている。ぼくは嬉しくなって、もう二回繰り返した。
「今日は、あたしの誕生日なの」
「そうなんだ」
さっきの男が花束を持っていた意味が分かった。
「正確に言えば、お昼過ぎに生まれたから、まだ子宮の中だけどね」
「じゃあ、ぼくがランチをご馳走するよ。その後でケーキも買ってさ。お祝いをしよう」
「お金の無いうたはるとに言われると、嬉しいかもね」
そう言ってぼくに顔を近づけてきた咲雪さんの肩を、思わず抱き寄せた。
「どうするの?」
ぼくはキスをした。
咲雪さんの唇は温かくて湿っていた。気づくとぼくたちはお互いの唇をむさぼっていた。息をするために唇を離すと、強力な磁石のようにすぐにひとつになった。
「どうするの?」咲雪さんがまた訊いた。
「咲雪さんが生まれた時間まで、一緒にいたい」
「うたはるとって、あたしが考えてるより、はるかにズルイ男ね」
「ぼくのことを考えていたんだ」
咲雪さんの首元のボタンを外してシャツを広げた。
白い胸に手を当てる。柔らかいと思っていた乳房に意外と弾力があった。力を入れないとはね返されそうになる。
「痛いわ」
「ごめん」
ぼくはパーカーを脱ごうとしたけど、きつくて胸で止まる。両手が自由に動かせない。
「脱がせて欲しい」
「それって、男のセリフじゃないわね」
咲雪さんが座っているぼくの膝にまたがって、頭からパーカーを引っ張る。
ジーンズの中で爆発しそうな勢いになっている。
「股間を硬くしてんじゃないわよ」
「仕方ないよ。咲雪さんのお尻が動くから」
パーカーが脱げると、咲雪さんを抱きしめた。お尻を持ち上げて胸に顔をうずめる。
ショートパンツのボタンを指で探した。
「どうするのか知ってる?」
「もちろんだよ」
嘘をついた。ぼくが見たポルノ映画はモザイクだし、エロい写真集は肝心な場所を黒く塗り潰されていた。ぼくはジーパンを下げると、咲雪さんの上に重なった。
「そこじゃないんだけど」
ぼくは動きを止める。ペニスに目がないので、どこが正しいのか分からない。
「案内をして」
耳元で頼んだ。
咲雪さんの指で誘導してもらう。
「どんな感じ?」
頭の中でメモでも取っていそうだ。
「なんだかひとつになっている感じがする」
「こんなことで、繋がれないわよ」
クックックと笑う声で一瞬、気持ちが萎える。
でもペニスは別のようだ。
咲雪さんの腰が動いたので、僕も同じ様に動く。
ずっと奥まで入ると、止めていた息を吐いた。
「いきそうなら言ってよ」
身体をくねらせている咲雪さんに合わせて、ぼくもどんどん加速した。
ぼくがアパートに到着すると、前に停っているスポーツカーから長身の男が降りた。
横を通り過ぎてから、スーパーで咲雪さんと一緒にいた男だと気付いた。
ぼくがアパートの外階段を静かに上がると男も音を消して付いて来る。
咲雪さんの部屋のドアをノックしているときに、男が階段を上がりきった。
薄暗くて表情は分からない。
手に花束を持っていた。
ドアが開かないのでノブを回すと、鍵はかかっていなかった。
ぼくは男を見ながら部屋の中に入った。
咲雪さんは、窓から身を隠すようにして、壁にもたれていた。
階段を駈け下りる靴の音。自動車のドアを強く閉める音。
急発進したエンジンの排気音が聞こえなくなるまでぼくたちは黙っていた。
「どうして、あんな男を受け入れたのか、わけが分かんない」
つぶやくように言った。
「男って嫌われたことに気づかずにいられるものなの?」
黙り込んだまま、ぼくはテーブルに置いたドーナツの函を見つめていた。
「ひどい事になってるね」
咲雪さんが、ぼくの胸の模様に初めて気付いたように言った。
「大丈夫。ちょっと引っ掻かれただけだから」
「サイズが合うのがあればいいけど」咲雪さんはカーテンの中へ入って行った。
ぼくは勝手に冷蔵庫を開けた。ソーダーが買い足してある。ビールと一緒に取り出した。
「こんなのしかないわ」
咲雪さんはバンドエイドとタオル地のパーカーを探し出してくれた。
着替えたけど、小さくて腕を自由に動かせない。
ぼくは案山子のように両手を広げて一回転する。
咲雪さんが口を押さえて笑いをこらえている。ぼくは嬉しくなって、もう二回繰り返した。
「今日は、あたしの誕生日なの」
「そうなんだ」
さっきの男が花束を持っていた意味が分かった。
「正確に言えば、お昼過ぎに生まれたから、まだ子宮の中だけどね」
「じゃあ、ぼくがランチをご馳走するよ。その後でケーキも買ってさ。お祝いをしよう」
「お金の無いうたはるとに言われると、嬉しいかもね」
そう言ってぼくに顔を近づけてきた咲雪さんの肩を、思わず抱き寄せた。
「どうするの?」
ぼくはキスをした。
咲雪さんの唇は温かくて湿っていた。気づくとぼくたちはお互いの唇をむさぼっていた。息をするために唇を離すと、強力な磁石のようにすぐにひとつになった。
「どうするの?」咲雪さんがまた訊いた。
「咲雪さんが生まれた時間まで、一緒にいたい」
「うたはるとって、あたしが考えてるより、はるかにズルイ男ね」
「ぼくのことを考えていたんだ」
咲雪さんの首元のボタンを外してシャツを広げた。
白い胸に手を当てる。柔らかいと思っていた乳房に意外と弾力があった。力を入れないとはね返されそうになる。
「痛いわ」
「ごめん」
ぼくはパーカーを脱ごうとしたけど、きつくて胸で止まる。両手が自由に動かせない。
「脱がせて欲しい」
「それって、男のセリフじゃないわね」
咲雪さんが座っているぼくの膝にまたがって、頭からパーカーを引っ張る。
ジーンズの中で爆発しそうな勢いになっている。
「股間を硬くしてんじゃないわよ」
「仕方ないよ。咲雪さんのお尻が動くから」
パーカーが脱げると、咲雪さんを抱きしめた。お尻を持ち上げて胸に顔をうずめる。
ショートパンツのボタンを指で探した。
「どうするのか知ってる?」
「もちろんだよ」
嘘をついた。ぼくが見たポルノ映画はモザイクだし、エロい写真集は肝心な場所を黒く塗り潰されていた。ぼくはジーパンを下げると、咲雪さんの上に重なった。
「そこじゃないんだけど」
ぼくは動きを止める。ペニスに目がないので、どこが正しいのか分からない。
「案内をして」
耳元で頼んだ。
咲雪さんの指で誘導してもらう。
「どんな感じ?」
頭の中でメモでも取っていそうだ。
「なんだかひとつになっている感じがする」
「こんなことで、繋がれないわよ」
クックックと笑う声で一瞬、気持ちが萎える。
でもペニスは別のようだ。
咲雪さんの腰が動いたので、僕も同じ様に動く。
ずっと奥まで入ると、止めていた息を吐いた。
「いきそうなら言ってよ」
身体をくねらせている咲雪さんに合わせて、ぼくもどんどん加速した。