第08話 準備は、わいがや 3
文字数 2,326文字
◆2023・10・28(土)
昭和35年、小学生だったぼくの近所にあった貸本屋は、一泊二日で10円だった。
子どものぼくは、薄暗い棚に並んでいた漫画が夢の世界への扉だった。
(最終ページに貼り付けてある貸し出し票 20円と書いてある)
通りに面したガラス戸を開けると、鈴の音が大きく鳴った。中に入っても風を防ぐだけで寒さは外と一緒だ。狭い店内の真ん中を背中合わせの本棚で仕切ってあり、壁際の本棚と合わせて四面が本に埋まっている。
コンンクリートの床には、古いマンガ雑誌が板の上に積み上げてある。月刊誌『少年』『ぼくら』『冒険王』『少年クラブ』『少女クラブ』『りぼん』などで、週月誌は『少年サンデー』『少年マガジン』などが古本として売っている。
貸本マンガの棚には、目につくところに人気のある手塚治虫の『0マン(ぜろまん)』『ジャングル大帝』、前谷惟光『ロボット三等兵』、武内つなよし『赤銅鈴之助』、寺田ヒロオ『背番号0『影』『街』には、さいとうたかを、石川フミヤス、K・元美津、山森ススム、佐藤まさあきなどが描いていた。
小説風に始めてみました。
NOVEL DAYS に投稿している「『無花果(いちじく)』第34話 木枯らし 3」から抜粋しました。
*
浦山さん 山田さん
鵜飼です。
今、頼まれて、当時、地方都市にあった全ての炭鉱社宅、炭鉱関連企業の社宅ごとに、写真と『思い出』の文章を整理する作業を進めています。
最後は冊子に編集するので、まだまだ時間はかかるのですが、作業の目途がついてから訪問記を書かせていただきますね。
*
鵜飼さん。
了解しました。
無理を言ってすみませんでした。
ちょうど、いま書いている『無花果(いちじく)』とリンクしていて、当時のことをいろいろ考えていると、興奮が高まって眠れなくなりました(笑)。
ぼくは、全くお酒は飲めないんです。ビールをコップ半分飲むだけで、顔だけではなくて手足までも赤くなってすぐに寝てしまう体質なのです。
そこで、思い切って飲んだのです。
(妻や息子たちが飲むので、家に置いてあります。)
ぼぉっとしてきて、ベッドに横たわって眠くなってきて、しめしめと喜んでいると、尿意をもよおしてきたのです。
それが一回では済まなくて。起きてはトイレに駆け込むというのが数度あって、結局眠れませんでした(笑)。
いま、すこし冷静になって考えると、ぼくがはしゃぎ過ぎて、お二人に負担をかけていると思いました。
毎日、投稿するぞ! とか、締切を作ったりと、勝手なことをしてしまいました。
NOVEL DAYS は、投稿してからも修正することが出来ますし、画像も後から貼り付けることが出来ますので、締切を設けなくてボチボチやっていくほうがいいかもしれませんね。
でも、いまお送りしている第01話は、11月1日に投稿したいのです。
本名か仮名か、どちらにするかを連絡してくださいね。
浦山みのる
*
浦山さん
とんでもないです。ご提案をとても嬉しく思いました。
記録を残していくことは、私にとっても励みになります。
頑張って書きますよ。
鵜飼
*
こんにちは。
木曜日金曜日そして今日の土曜日と地方で三日間会議、イベント等があり全く手付かずです。
今日は深夜遅く帰宅するので、資料等で明日書庫で探そうと思います。
ペンネーム考えておきます。今から宿を出発します。
*
憧れの『書庫』だ。
書庫で本を探す。なんて贅沢な時間の過ごし方なんだろう。
ああ……。
いやいや、うらやまは、うらやまがらないぞ!
深夜、山田さんからメールが届いた。
帰宅して、すぐに書庫へ行ったにちがいない。
貸本漫画の画像が、たくさん添付してあった。
*
私が貸本屋に通いだした頃は昭和42〜3年頃でしたので、ほとんどの貸本が休刊したり新書版タイプの形態に変わりつつある時期でしたので、投稿してもなしのツブテでした。
もっぱら月刊誌や週間誌に似顔絵を投稿していました。
ただ、昭和45年頃に『青春』を発行していた第一プロに『青春』のバックナンバーを注文したところ『もう運営辞めています』という返事とカバーが破れていたり陽にヤケていたりしていた『青春』を数冊が送られてきました。
(裏面下に 第一プロダクション発行 ¥200 と印刷してある)
*
(その後、買い揃えた『青春』のバックナンバー)
ですから、貸本作家の生原稿は後に古本屋の目録等で、ようやく手に入れた次第です。
また思い出したら書きます。
*
貸本漫画の生原稿もコレクションしているようだ。紙上対談とかをして詳しくしりたいな。
鵜飼さんも最初に会ったときに『鈴木翁二』の生原稿を持っているといってたし、ぼくも生原稿なら、単行本を買ったときにオマケで付いてきた原画がどこかにあるはずだ。
ぼくもそろそろ、画像を用意しないといけないんだけど、大きなハードルが二つある。
妻から「紙くずを棄てろ」といわれたものだから、ダンボール函に入れて分散させて隠し持っているのが10函ぐらいあるんだ。
それが数十年前のことなので、どの函に何を入れたか忘れてしまっている。
目が不自由になってしまったぼくは、妻に頼んで一函づつ中身を説明してもらわないといけないのだ。
いくら優しい妻でも、「紙くず」が目の前に山と積み上がると、怒り出すだろうし、呆れてしまって怒る気力を失くしてハードルを越えたとしても、次のハードルが待ち受けている。
撮影を頼むことになる。言い出しにくいよな。
しかし、もうそんなことでグズグズしている場合ではない。
明日だな……。
準備は、わいがや 4に続く。
*