第20話
文字数 1,074文字
*
富田に、美沙子さんの家へ行こうと誘われた。
ぼくは美沙子さんのことをよく知らない。
年齢不詳だけど、ラテン系の華やかさを持っている大柄の美人だ。
富田は美沙子さんの愛人の一人で、いつも彼女が同棲している男から奪い取りたいと言っていた。
ぼくには同棲中の男も愛人だと思うけど、富田には独自の序列があるみたいだった。
「美沙子さんは、男と同棲しているんだろ。そんなところへ富田が姿を見せてもいいのか?」
「今は俺が同棲相手です」
胸を反らせている富田を見て、みんなに自慢をしたいのだとわかった。
「ラタイ館は引き払ったのか?」
「まだキープしてます」
「じゃぁ、河辺さんにも声をかけるから、今度の日曜日ってことでいいかな」
「了解です。美沙子に言っておきます」
呼び捨てをした富田の顔を見た。
わざと言った様子はなかった。
この分だと、美沙子さんに対しても名前で呼んでいるようだ。
ぼくはまだ三奈を「きみ」と呼んでいる。「三奈」と呼ぶタイミングはいつなのだろう。
「俺は、美沙子から色々教えてもらってますから、浦山さんよりもセックスに関しては詳しいです」
富田の自信に満ちた顔はしゃくにさわるけど、認めざるを得なかった。
ぼくの女性経験はまだ一人だった。
「この部屋では、セックス出来る可能性はゼロです。浦山さんはホテルに誘えるタイプじゃないし」
「そうなんだよな」
「三奈ちゃんの部屋しかないですね」
「想像力を全開にして考えても、部屋にたどりつけない」
「ダイレクトに、きみの部屋へ行きたい。って言えばいいんですよ」
「それは抱きたい。セックスしたいと言うのと同じだろ」
「だって、セックスしたいんですよね。俺は言いますよ」
「そうだけど、ぼくには無理だ」
「じゃあ、きみの手料理をたべさせて欲しいと押しかけるのは?」
「言えるかな……、無理っぽいな」
「一泊二食、セックス付きですよ」
富田は唇を舐めると、ケケケッと笑った。
*
ぼくたちは何かにつけて集まって騒いだ。
花見や誕生会はもちろんのこと、手作りカレーパーティ、闇鍋パーティ。アルバイトを辞めたり、クビになったときは、お疲れさまパーティをした。
日曜日も河辺さんと高橋、そして乗り気じゃなかった三奈と四人で三鷹へ行った。
富田が書いた略図は、目印になる店や曲がる道が的確に示してあった。
目的の場所に近い曲がり角から、富田が姿を現してぼくたちを出迎えた。
「迷ってないかと思って迎えにきました」
そう言った富田の三白眼が、じろっと三奈を見た。
三奈が隠れるようにぼくの後ろへさがった。
無理に連れてきたことを少し悔やんだ。
富田に、美沙子さんの家へ行こうと誘われた。
ぼくは美沙子さんのことをよく知らない。
年齢不詳だけど、ラテン系の華やかさを持っている大柄の美人だ。
富田は美沙子さんの愛人の一人で、いつも彼女が同棲している男から奪い取りたいと言っていた。
ぼくには同棲中の男も愛人だと思うけど、富田には独自の序列があるみたいだった。
「美沙子さんは、男と同棲しているんだろ。そんなところへ富田が姿を見せてもいいのか?」
「今は俺が同棲相手です」
胸を反らせている富田を見て、みんなに自慢をしたいのだとわかった。
「ラタイ館は引き払ったのか?」
「まだキープしてます」
「じゃぁ、河辺さんにも声をかけるから、今度の日曜日ってことでいいかな」
「了解です。美沙子に言っておきます」
呼び捨てをした富田の顔を見た。
わざと言った様子はなかった。
この分だと、美沙子さんに対しても名前で呼んでいるようだ。
ぼくはまだ三奈を「きみ」と呼んでいる。「三奈」と呼ぶタイミングはいつなのだろう。
「俺は、美沙子から色々教えてもらってますから、浦山さんよりもセックスに関しては詳しいです」
富田の自信に満ちた顔はしゃくにさわるけど、認めざるを得なかった。
ぼくの女性経験はまだ一人だった。
「この部屋では、セックス出来る可能性はゼロです。浦山さんはホテルに誘えるタイプじゃないし」
「そうなんだよな」
「三奈ちゃんの部屋しかないですね」
「想像力を全開にして考えても、部屋にたどりつけない」
「ダイレクトに、きみの部屋へ行きたい。って言えばいいんですよ」
「それは抱きたい。セックスしたいと言うのと同じだろ」
「だって、セックスしたいんですよね。俺は言いますよ」
「そうだけど、ぼくには無理だ」
「じゃあ、きみの手料理をたべさせて欲しいと押しかけるのは?」
「言えるかな……、無理っぽいな」
「一泊二食、セックス付きですよ」
富田は唇を舐めると、ケケケッと笑った。
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ぼくたちは何かにつけて集まって騒いだ。
花見や誕生会はもちろんのこと、手作りカレーパーティ、闇鍋パーティ。アルバイトを辞めたり、クビになったときは、お疲れさまパーティをした。
日曜日も河辺さんと高橋、そして乗り気じゃなかった三奈と四人で三鷹へ行った。
富田が書いた略図は、目印になる店や曲がる道が的確に示してあった。
目的の場所に近い曲がり角から、富田が姿を現してぼくたちを出迎えた。
「迷ってないかと思って迎えにきました」
そう言った富田の三白眼が、じろっと三奈を見た。
三奈が隠れるようにぼくの後ろへさがった。
無理に連れてきたことを少し悔やんだ。