第25話

文字数 1,023文字


 ぼくはファスナーを大きく開いてから、ゆっくりと閉めていく。 
 ハンガーラックに掛けてある服からは、三奈の匂いがする。
 後ろでコップをテーブルに置く音がしたので振り向くと、オレンジジュースの入った二個のコップが置いてあった。ドアの横の台所に小型の冷蔵庫がある。
 ぼくがテーブルの前に腰を落とすと、三奈は少し離れたところに座った。
「部屋を見られるのって恥ずかしい」
「きれいな部屋だよ」
 ジュースを一口飲んだ。

 ぼくは意味もなく天井に目を向けていた。
 三奈は膝の上に手を置いて、カーペットを見つめている。こっちを見ようとはしなかった。
壁の向こうから『およげ!たいやきくん』の歌が聴こえてきた。
「駅でも流れてたよね」
 ぼくが笑いかけると、三奈は顔を向けてうなずいた。
 三奈の肩に手を置いて引き寄せようとした。
「電気、消さなきゃ」
 立ち上がった三奈が、ドアの近くにある壁のスイッチを押した。

 部屋は、レースのカーテンを透した月明かりだけになった。
 三奈が押し入れを開けた。ぼくは気づいてテーブルを壁際へ運んだ。三奈の部屋での共同作業は、蒲団を敷くことだった。
 三奈が両腕を上げて、後ろに手をやっている。ポニーテールを束ねているリボンは、ぼくがほどいてみたかった。三奈は頭を左右に大きく振った。黒い髪が白い肩に広がった。
 ぼくはTシャツを脱ぎ捨てると、三奈の背中に回した手で抱き寄せてブラジャーのホックを外した。
 張りのある乳房だった。首元に顔を埋めて、ゆっくりと倒れ込む。
 乳首を口に含んで、舌先をあてた。三奈が息を漏らした。舐(な)め続けると、乳首が溶けてしまいそうな気がする。歯で軽く噛むと、三奈の口のから、喉元で押しつぶしたような声がかすかに聴こえた。
 細くてすっとした背中の下に丸い尻があった。右手をパンティに差し入れてそのままずらせていく。三奈が腰を軽く浮かせた。
 パンティを足から外すしてから、ぼくはパンツを引き下げた。
 身体の熱が高まっていく。三奈の心臓の音が近い。鼓動が直接胸に届いてくる。においが、汗に混じって濃くなった。
 覆いかぶさるような体勢で、三奈の足を持ち上げる。
 三奈はうなずくように、唇に手の甲を押し当てた。

 ペニスが三奈の身体の奥へ奥へと、どこまでも深く繋がり続いていく。この瞬間が永遠のように感じた。
 ぼくの呼吸が荒くなり、三奈の声は喉元で収まらなくなった。
 身体の熱が皮膚を溶かして混ざり合い、境界線をなくしていく。




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